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印刷2007/11/09 17:35

連載

奥谷海人のAccess Accepted

 イギリスで製作された新しいゲーマー用ツール「StreamMyGame」は,かなり異色のソフトウェアである。ブロードバンドを介してソフトウェアをストリーミングし,別の場所にあるPCで再生,ゲームのプレイも可能になるというもので,Linux版であればPLAYSTATION 3を使ってリビングのHDTV(ハイビジョン対応テレビ)でもPCゲームが遊べるようになるわけだ。具体的にどんなソフトなのか,ちょっと紹介しよう。

Access Accepted第149回:PCゲームがPS3でもプレイ可能になる時代
PCゲームをPS3にストリーミング!?
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StreamMyGameの通信データは瞬時にMP4フォーマットにデコードされるため,YouTube用のビデオ作成も容易だ。欧米でよくある仲間うちや学校レベルのLANパーティでも,ほかのプレイヤーが対戦しているのを背後から覗き込むのではなく,自分のPCで視聴することができるのだ

 ロンドンで,「StreamMyGame」という面白いゲーム用ソフトウェアが誕生した。このStreamMyGameは,PCゲームの画像データをIPTV(Internet Protocol Television)用の信号にリアルタイムで変換し,ブロードバンドを通してほかのPCなどで見られるようにするというものだ。いわば,ゲームのプレイ画面をインターネットに乗せてブロードキャスティングさせてしまうようなシステムで,公式サイトでユーザー登録し,無料で配布されるプラグインソフト「Game Streamer」をインストールするだけで使用できるようになるという。これによって,自分のデスクトップPCにあるゲームを,出先のノートPCでプレイできるのだ。

 便利なのは,このサービスを利用するに当たって,ゲームソフト側が個別に対応している必要がないことだ。とはいえ,会社の規模が小さいためか,どんなゲームがプレイ可能なのかを完全には調査しきれていない様子。現在のところ,「The Sims 2」「Battlefield 2」「World of Warcraft」「Age of Empires III」といった人気タイトルは大丈夫のようで,「FIFA08」や「BioShock」「Unreal Tournament III」といった最新作,そして「Quake IV」や「Enemy Territory: Quake Wars」のようなOpenGL系タイトルまでの互換性は確認されているという。

 StreamMyGameのサービスは,ホストのコンピュータシステムから端末PCにビデオ/オーディオデータが配信され,さらに端末PCからホストにキーボードやマウス操作のデータが送信されて瞬時にフィードバックされるという仕組みだ。現行ではLANでのストリーミングのみしか運用されておらず,インターネットまではサポートされていない。今のところあくまで,家庭内で楽しむといった雰囲気だ。

 とはいえ,2007年末までにはLinux版もリリースされる見込みで,そうなればPCゲームやPCで再生しているDVDを,PLAYSTATION 3(OSにLinuxを採用している)に接続したHDTVでプレイしたり見たりできるようになるだろう。送り先の端末システムには,ブロードバンドのストリーミングを処理できる能力さえあれば,それほど高いスペックは要求されていない。

 さらに,2008年の早い段階では,家庭以外の端末PCでもゲームがプレイできる見込みで,そうなれば,自分のサーバーにあるゲームを外部の利用者がプレイするというビジネスモデルも考えられる。この場合,StreamMyGameに正式対応させることで,月額料や「ゲーム一回につきいくら」といった細かい料金体系を設定できるらしい。

(編注:日本にも,「Gクラスタ」というよく似たサービスがある。詳しくは 「こちら」

 

ゲーム産業におけるブロードバンド革命の申し子

 StreamMyGame社長のRichard Faria(リチャード・ファリア)氏は,10月26日付けで公開されたプレスリリースの中で「我々は,PCのハードウェア,ネットワーク,そしてゲーマーにより多くの自由を与えたいという意志などに裏打ちされた,新しいゲーム産業のパラダイムに乗り出そうとしてます」と話している。リリースでは,あくまでも所有するゲームソフトをほかの機器でプレイすることを目的とした個人ゲーマー(もしくは仲間うち)向けのサービスであることが強調され,他人との違法なデータ共有や個人データの流出といったネガティブな話題は(まあ当然ながら)出てこない。

 料金形態は,スタンダードサービスは無料だが,スクリーンの解像度が640x480ドットに固定されているなどいささか物足りない。ただ,年間メンバーシップ9.99ドル(約1200円)のPremium会員になれば,最大解像度が1280x720ドットとなり,さらに19.99ドル(約2500円)のUnlimited会員なら,スーパーHDTVで3200x2400ドットまでの解像度をサポートする。

 Linux版が公開されていない現状では,べつの場所にあるHDTVでPCゲームをプレイするためPLAYSTATION 3を利用する,という行為にどれだけの問題があるのか(あるいは,ないのか)はよく分からない。ただし,個人や家族以外でゲームがやり取りされること自体に問題が生じてくる可能性もある。「家に友達を招待して一つのゲームで対戦をする」というごく普通の行為は,ネットワークの進歩によって「別々の場所にいる二人が一つのゲームで対戦する」までになった。この“二人”が“不特定多数”になり,そこに金銭が介在してくるケースは間違いなくあるだろう。

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StreamMyGame社長であり,ソフト開発者のRichard Faria氏。PLAYSTATION 3を介してテレビでもPCゲームができるだけでなく,PDAや携帯電話などへのストリーミングも考えているという。日本語未対応だが,「有志の人はぜひ翻訳を」と,小さな会社ゆえの呼びかけをしている

 最近,欧米ではゲーム開発者達の間で「いつかコンシューマ機は一つになる」という半ば期待の入り混じった予測が語られることが多い。同じゲームが複数のコンシューマ機に移植されたり,発売時期やコンテンツを少し変更するだけで別のコンシューマ機版として登場することに対する,コンテンツ制作者達の“やるせない感じ”が現れているのかもしれない。映画会社はただ映画を作るだけであり,それを再生する環境のことは気にしない。ゲーム制作もそうあってほしいと開発者達は願っているのだろうが,彼らの期待が実現するのは,近い将来のことではないだろう。

 しかし,ブロードバンドのインフラが世界的にも急速に整いつつある現代,インターネットこそが彼らの希望を実現する手段になるのかもしれない。StreamMyGameのようなサービスが,対応機種を気にしないゲーム制作の方法として発展する可能性もある。「ゲーム機が一つになる」ことはしばらくないだろうが,このStreamMyGameの登場がゲーム業界に何かしらのインパクトを与えることはありそうだ。StreamMyGameを,「ゲーム産業におけるブロードバンド革命の申し子」というのは大袈裟過ぎるだろうか?

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。突然締め切り当日になって「今日は間に合いそうにない」と言い出した奥谷氏。理由を尋ねると,なんと娘と息子が通う学校でシラミが大発生して,二人ともシラミにたかられたというのだ。仕事に出ていた奥谷氏の奥さんがあわてて帰宅して,子供達を迎えに行ったり,シラミ専用ヘアーサロンで治療品を購入するなど,学校の指示に従ってあちこち奔走。その後も洗濯やら洗髪やら散髪やらで大騒ぎとなり,そんな家族の大混乱を背中に見ながら必死で執筆を終わらせたそうだ。それにしても「シラミ専用サロン」のあるアメリカってどうなのよ?

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