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実用レベルに向けて着々と進化するWiMAX。UQによる商用サービスの現状まとめ
地域限定ながら,だいぶよくなってきた接続環境
〜UQ WiMAXの現状を確認
だが,スタート当初は利用できるエリアが極端に狭く,エリア内でも通信断が頻発。4Gamerでも,紹介するつもりで初夏に対応端末を入手したが,Webブラウザを利用した一般的なインターネット接続すらままならないという,あまりのテスト結果に,「ゲーム用途うんぬんを語れるレベルではない」と,記事ごとボツになった過去があったりする。
だが,2009年終わり頃から,(都内が中心ではあるものの)三大都市圏で,利用者の間から,少しずつ“いい噂”が聞こえ始めてきた。実際,UQコミュニケーションズのプレスリリースでも,対応エリアや基地局の数は,着実に増えており,そろそろ,「で,使えそうなの?」「使えるようになってきたの?」と,興味を持ち始めた読者も多いのではないだろうか。
そんなMobile WiMAXの課題はいくつかあるが,その最たるものの一つが,ウリであるはずの速度である。というのも,Mobile WiMAXは,電波が安定して届いている範囲なら非常に高速だが,少しでも弱くなると途端に遅くなるのだ。この不安定さが,ゲームで使えないイメージにつながっていると言ってもいい。
イベントの冒頭で挨拶に立った,UQコミュニケーションズの田中孝司代表取締役は,速度を低下させる要因について「一番大きいのは,基地局の干渉だ」と説明する。
「ビルやマンションの上では逆に速度が低下してしまうことがある。これは上の階ほど,複数の基地局同士の電波が混ざってしまうためだ。(こういうケースでは)個別の屋内対応,もしくは外からビルに対して電波を送るといった対策が必要になる」(同氏)
下に示したスライドは,Mobile WiMAXで通信速度を規定する要素を示したもの。縦軸のRSSI(Received Signal Strength Indication)が電波強度,横軸のCINR(Carrier to Interference+Noise Ratio)は電波のきれいさ(≒基地局同士の干渉などによるノイズの影響)を表し,いずれも大きいほど良好ということになる。ここでポイントになるのは,RSSIだけでなく,CINRが,速度低下の大きな要因になることだ。
対応エリアのマップは,電波強度値-85dBmを基準に色分けされているという |
KDDIのIP網をバックボーンとして利用し,各基地局は100Mbpsのイーサネットで接続されているという。このバックボーンにより,混雑時における速度低下は最小限に抑えられていると田中氏は強調する |
また,速度に関しては,「同一エリア内に多数のクライアントが存在する場合に低下するのではないか」という指摘があるが,この点について氏は「エリア内で2人が使えば速度が2分の1になるかというと,そう単純なもではない」と否定。クライアント数増加が速度の低下させる原因は,バックボーン側の影響が大きく,「UQコミュニケーションズが持つバックボーンは強力なので,(多数のクライアントが存在する環境でも)速度の低下は最小限に抑えられている」と自信を見せていた。
また,ファームウェアの改善による速度アップも計画されているという。現状,Mobile WiMAXは理論速度の40Mbpsにはほど遠い,15〜16Mbps程度しか,実環境では出ないという状況だが「システム側と端末のファームウェアチューニングによる速度アップに取り組んでいる」(田中氏)とのことた。
実際,2月25日から提供が始まった端末側の新ファームウェアを導入すると,20Mbps前後までの速度アップが可能になるそうで,基地局側のチューニングがすべて完了する3月末までには,対応エリア内で20Mbps前後の通信速度が得られるとのこと。これはいいニュースだろう。
ファームウェアの改善は現在進行形で実施されており,最終的には30Mbps前後を目指しているそうである。
新ファームウェアを使った通信速度のデモ。仙台市内で行われたもので,50km/hで走行しながらの測定でも最大17Mbps程度,一時停止時には20Mbps前後が得られたという |
こちらは会場内で行われた次世代ファームウェアのデモ。ピーク28Mbps程度を記録していた。ただし,まだ波が大きい。「この波を抑えていくことが課題」と担当者は説明する |
また,会場の説明担当者に,ゲームなどのコンテンツと組んで普及を促進する計画はないかと聞いてみたが,現在のところは,広帯域を必要とするビデオをキラーコンテンツにしたい旨の回答が返ってきた。ただ,オンラインゲーム,あるいは携帯ゲーム機との連携を検討していないわけでもないとのことなので,通信速度と対応エリア次第では,次の動きが出てくるかもしれない。
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