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[GDC2008#43]「Crysis」はこうやって作られた。Crytekが語るCrysisメイキング物語
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印刷2008/02/23 23:47

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[GDC2008#43]「Crysis」はこうやって作られた。Crytekが語るCrysisメイキング物語

画像集#001のサムネイル/[GDC2008#43]「Crysis」はこうやって作られた。Crytekが語るCrysisメイキング物語
 中学生のとき,学校で「カツオブシができるまで」を観て感激して以来,「○○ができるまで」のファンになった筆者としては,一つのゲームタイトルの開発の歴史を知ることができるGDCは願ってもない機会だ。GDC 2008で行われた「Crysis in the Making」と題されたセッションは,まさに「Crysisができるまで」であり,ドイツのデベロッパであるCrytekからやってきた3名のスピーカー(ディレクターのCevat Yerli氏,リードデザイナーのSten Huebler氏,そしてプロデューサーのBernd Diemer氏)によって,Crysis開発の経緯が語られたのである。
 ハイレベルなグラフィックスやオープンエンドのデザインを実現して評価を得た前作,「Far Cry」(2004年)の終了後,Crytekはその反省として以下の点を挙げた。

・B級映画のようなストーリー
・クイックセーブの欠如
・高すぎる難度
・モンスターAIの貧困さ


 筆者的にもなんとなく分かるような気がする,これらの問題の改善は当然のこととして,Crytekはさらに高い“ビジョン”を掲げて来るべき次回作に挑むことになった。2004年後半の話だ。目標とされたビジョンとは,以下の4点。

・凍りついた楽園(Frozen Paradice)
・最高のゲーム表現(Maximum Game Expression)
・優れた戦略性(Outsmart Core Gameplay)
・エイリアンの侵略を描くリアルなSF(Realistic Sci Fi)


 凍りついた楽園とは,文字通り雪と氷に覆われたトロピカルアイランド。「南の島に雪が降る」という東宝映画が1961年に作られているが,たぶんそれとは全然関係なく,開発チームでの話し合いの結果出てきたコンセプトだとYerli氏は語る。一見して謎めいており,おそらく誰も見たことがない風景でもある。何があったのだろうかとゲーマーの興味をひくはずだ。次の,「最高のゲーム表現」とも関連するが,リアルな雪や氷などの再現はグラフィックス的にも挑戦すべきテーマである。

凍りついた楽園のイメージ
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画像集#004のサムネイル/[GDC2008#43]「Crysis」はこうやって作られた。Crytekが語るCrysisメイキング物語
 優れた戦略性は,ステルスでもアクションでもいけまっせというゲーム性で,やがてここからハイテクギア,「ナノスーツ」が生まれてくる。
 個人的に知りたかったのは,またしてもエイリアン/クリーチャーが登場するSFをメインに持ってきたことで,Crytekのモンスター好きは業界(筆者の周囲の2名ほどだが)でも有名な話。レクチャーでは「次もSFにする」とだけであっさり流されてしまったが,考えますに,もともとゲームエンジン開発を目指して設立されたCrytek。当時開発中のCry Engine 2をアピールするのには,前作と同じシチュエーションにしたほうが何かと良かったのだろう。
 というわけで,2005年にパイロット版として作られたのが「Core X」と名付けられたデモ。会場で公開された3本のムービーのうち,「Alian」と題された一本を直撮りしたので,まずはご覧あれ。


画像集#017のサムネイル/[GDC2008#43]「Crysis」はこうやって作られた。Crytekが語るCrysisメイキング物語
ディレクターのCevat Yerli氏
 ハイテク戦闘スーツをがっちり着込んだ兵士。エイリアンのデザインや,宇宙船内部が無重力であることなど,Crysisの雰囲気にかなり近いのがお分かりだろう。
 開発はステップ・バイ・ステップで進んだとYerli氏。彼らは「ジャングルとは何か? ゲームの舞台となるのはどんな土地なのか」を探るため,片道4日間かけて,ドイツのハンブルグから南太平洋フランス領ポリネシアのタヒチ島へ取材旅行を観光する,じゃなくて敢行する。ドイツにジャングルはないのだ。タヒチではジャングルをビデオ撮影したり,葉っぱの裏表を撮影したりと,知らない人が見たら「何やってんだろう」的な取材をしたそうだが,スクリーンに映し出されたスチル写真はCrysisそのもの。プレイしていると,ああ,オレもこんな島に住んでみたいとときどき思うのはそのせいだったのだ。ただの現実逃避かもしれないが。

ドイツから訪れた実際のタヒチ島の写真。なんだかあの小屋にロケットランチャーを撃ち込みたくなってくるから不思議だ
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画像集#007のサムネイル/[GDC2008#43]「Crysis」はこうやって作られた。Crytekが語るCrysisメイキング物語
 一般への初公開は2006年にロサンゼルスで開催されたElectronic Entertainmen Expo(E3)でのこと。筆者も記憶があるのだが,E3開催に先だって行われたMicrosoftのプレスカンファレンスで公開されたムービーが観衆の度肝を抜き,パブリッシャのElectronic ArtsやMicrosoftのブースではプレイアブル展示が行われていた。
 一般公開といっても,E3には業界関係者しか来ないので厳密にはメディアの反応なわけだが,Crysis開発チームはそこでいろいろな意見を耳にすることになる。例を挙げれば,グラフィックスはオッケー。驚きだ。とくにBreakable Vegetationと名付けられた,撃てば倒れる樹木のフィーチャーがリアル。Far Cryでは,木の陰から正確に当ててくる敵がうざかったが,今度は木ごと倒してしまえばいい。さまざまな機能を持ったナノスーツも,使いどころが今一つピンとこないけど,まあオッケー。とはいえ,ゲームをプレイした感覚はなんというか,あまりよくないなあ……。

画像集#008のサムネイル/[GDC2008#43]「Crysis」はこうやって作られた。Crytekが語るCrysisメイキング物語
 ドイツの生真面目さとでもいうのか,リアルさの追求に追われて「面白さ」の追求を忘れていたと彼らは思い知らされる。意見を総合すると,プレイ感覚が妙なのは,敵味方の動きを制御するAIに理由があるようだった。リアルなAIは必ずしも面白いAIではないのだ。とはいえ,おもちゃっぽいAIを作っては興ざめということで,以降,さまざまな改良が施される。AIを本物らしく見せるためには,状況に応じた動きを見せることが必要となるが,同じ状況で同じ行動をしてしまうのはまずい。プレイヤーは,二度と同じことが起きないような多種多様な戦闘を望んでいるのだ。さらに,塀を跳び越えた兵士がたまにつまずいて転んでしまうといった小技を利かせることも忘れてはならない。

画像集#009のサムネイル/[GDC2008#43]「Crysis」はこうやって作られた。Crytekが語るCrysisメイキング物語
 ゲーム性の中心となるナノスーツにも「使いにくい」という声が多かった。いろいろな機能を追加するたびに押すべきスイッチが増え,わけが分からなくなっていくのである。
 ここは,多数のフォーカスグループ(つまりテスターのこと)を使って改良を繰り返したという。Huebler氏によれば,便利だろうと思って加えたフィーチャーにテスターがまったく興味を示さなかったり,拒絶されてしまったり(「いらねー」ですね),相反する要望があがったりと,苦悩の連続だったとのこと。ただ,結果として考えてみれば常にプレイヤーのほうが正しかっと彼らは振り返る。

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オブジェクトの配置を検討する。箱一つの配置にも気をつかう必要がある
 スニークでもアクションでも楽しめるというゲーム性のため,マップにも頭を悩ませることになる。クロークモード(姿が消えていて発見されない状態)で移動できる距離には限りがあるので,遮蔽物になってくれるオブジェクトをどこにどのように配置するかで戦闘の面白さは違ってくる。また,マップ全体がオープンエンド(あちらではサンドボックス=箱庭と形容されることも多く,Crytekもそう呼んでいる)であるため,その構成にも工夫がいる。例えば岬Aの対空砲を片付けてから岬Bの対空砲を破壊して,それから倉庫にいってほしいのだが,もしプレイヤーが岬Bの対空砲を破壊していきなり倉庫に向かった場合,ストーリーの兼ね合いはどうすっかなあという感じだ。これは数多くの図表を書くことで対処したが,シングルプレイFPSの場合,マップの出来不出来がそのままゲームの面白さに直結するため,おろそかにはできないのである。うう。書いてるほうも頭が痛くなってきた。

オープンエンドなマップは,プレイヤーが次に何をするか分かりにくいのがやっかいだ。そのため左写真のような図表が活躍した。でもやっぱり分からない
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本文には書かなかったが,ユーザーインタフェース画面についても試行錯誤したとのこと。左はその候補の一つで,右はその結果のニワトリマーク。つまりボツ
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画像集#015のサムネイル/[GDC2008#43]「Crysis」はこうやって作られた。Crytekが語るCrysisメイキング物語
 こうした長々と続く地道な作業ののち,2007年11月にCrysisは発売された。グラフィックスなどに対する評価は高いものの,販売本数は苦戦が続いているようだ。ゲーム性の古さを指摘する声もある。
 そんな中,彼らはいくつか思うことがあるようだ。Yerli氏は,ゲームの開発にはビジョンを持ち続けるということがなにより大切だという。開発中,いろいろと選択に迷う状況も出てくるが,ビジョンに従って混乱なく作業を進めることが必要だ。ビジョンはチーム中で共有されなければならないし,さりとて教条主義に陥ることなく,それなりの柔軟性も維持していなければならない。
 Crysisの開発において,開発チームは再びさまざまなことを学んだ。例えば,「Agile development is your best friend」もその一つ。これは,さっさと作るのはいいことだ,というような意味になる。Crysisのリリース延期にヤキモキした筆者としては微妙なのだが,「完成したときに発売します」というのはチームにとってはよくないことだとのこと。
 というわけなので,プレイヤーとしてはCrytekの次回作がさっさと出てくることをぜひ期待しよう。Crysisの拡張版にも期待したいところだ。
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