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大逆転劇に会場が沸いた「FEZ」オフラインイベント「バンクェット 〜The NEW AGE AWKEN 2016〜」レポート
「バンクェット」は,最大10人で構成されるチームの中から7人を選んで戦う7vs.7形式のPvP戦。2016年2月から開催されていたオンライン予選を勝ち抜いた各ブロック代表3チームと,敗者復活戦から這い上がってきた1チームの合計4チームが秋葉原で激突した。実に3年ぶりとなる今回のオフラインイベントでは,バンクェット決勝大会のほか,2016年のアップデート方針についても語られたので,その内容を合わせてお伝えしよう。
2016年は50vs.50というFEZの原点に立ち戻る。土台固めやイベントのあとに「何かでっかい」ことも!?
バンクェットの模様をレポートする前に,会場で発表された2016年のアップデート方針についてお伝えしよう。
今年の12月で10周年を迎えるFEZ。今後のどのように運営していくかをスタッフ間で話し合ったところ,アップデートやイベントを充実させるのもいいが,本作の一番良いところである「50vs.50で仲間と共に勝利を目指す戦争ゲーム」というFEZの原点をしっかりさせるべきだ,という結論に達したという。そこで2016年は,前半にFEZの原点である土台部分の確立と,さまざまなイベントの実施を両輪として,そののちに新要素を追加する予定だと内山氏は話した。
その具体的な内容についてだが,まず現状の土台がためとして,内山氏はFEZのメインコンテンツである戦場に対する問題点を挙げた。
現在,100人に満たずに行われることもある「人数割れ戦場」や,サーバー間の人口差,国家ごとの人口格差といったプレイヤー数に関する問題を最優先でてこ入れしたいと話す。
FEZはひとつの戦場で100人が同時にプレイできるゲームだ。人数が割れるほど少ないサーバーは,そもそも人口自体が少なく戦争が起こりづらい。そのため,戦争がよく起き,人数割れしないサーバーを求めて人が集中するのは当然と言えるだろう。
また強い国家は勝利しやすく,その国に入れば勝ちやすくなると考え,「勝ち馬に乗る」プレイヤーがさらに集中し,これが国家ごとの人口格差や割れ戦場につながっているという。極端な例としては,その圧倒的な人口により,ある国家が全土を制覇してしまうこともあるほどだ。
こういった現状をどうにかしたいと話す内山氏だが,運営が国家に介入するとプレイヤーのプレイスタイルの否定にもつながってしまうため,直接的な解決方法は難しいと話し,例えば割れ戦場で人数が少ない方に入るとメリットがあったり,少数の国家に所属することにメリットがあったりなどといった形の施策を考えたいとした。
続いて,戦場そのものの問題点について話が及んだ。
戦争を行うとなれば,やはり欲しいのは「勝利」だ。国家ごとに提示される「目標戦」で勝利することもそのひとつだが,いまひとつモチベーションを上げるほどのメリットがないのが現状だ。この状況を打破するため,勝ったら何かもらえるといったものではなく,もっとモチベーションがアップするような施策を考えいると内村氏は話した。
FEZの戦争は,ある程度の実力がある歩兵と,建築などの裏方がうまくかみ合っている相手から勝敗を覆すのはなかなかに難しい。そういった戦術の確立こそがFEZの面白さでもあるのだが,逆転要素が少ないため,ある程度戦争が進んで逆転が不可能そうだと認識すると,プレイヤーの心が折れて,終戦まで無気力プレイになってしまいがちなところがあるのだという。一応,キマイラなどの一発逆転要素もあるが,より分かりやすい逆転要素を考えているとのこと。
ちなみに,かつては序盤はワザと劣勢になり,終盤に召喚したドラゴンで大逆転を狙う戦術もあったが,建築をないがしろにする戦法であったためか,のちに修正されてしまった。歩兵戦と建築による従来の戦争を否定しない,新たな逆転要素に期待したいところだ。
また,意外となり手の少ない召喚についてもてこ入れを行う予定で,より特色を出せる,それぞれの召喚でしかできない部分を調整したいという。
そのほか,スパイや無駄な建築物の建造など「利敵行為」を行うプレイヤーを戦場から排除するためにあるものの,現在,あまり機能していないという「キック機能」を,使いやすくかつ悪用されないように改良する予定のほか,階級システムや各種ポイント,UIなどの調整や改修も行っていくとのこと。
スキル調整も近々に実施したいとのことだが,バンクェット大会の実施もあったので,遅らせていたという。まとめて一気に変更するのではなく,少しずつ,しっかりと役割を出せるよう調整をしていきたいとのことだ。
2016年のもうひとつの車輪となる,イベントについても説明が行われた。従来のイベントは「戦争に行って○○を集めて,アイテムと交換しよう」的なものが多かったが,それらとは毛色の違ったイベントを実施したいと内山氏は話した。
その一例として,得体の知れないモンスター(?)が発掘されて何かイベントが発生したり,なじみ深いどこかで見たことのあるようなマップで市街戦をしてみたり……などのスライドが紹介された。
この2つの土台をしっかり固めた上で,サービス開始10周年を記念した2016年に「何かでっかいこと」をやりたいと内山氏は話す。50vs.50で仲間と共に勝利を目指すゲームをしっかりやってから,新しい要素やでっかいことを行いたい,行わなければならないと話をまとめた。
白熱した試合が続いたバンクェット全試合をレポート
それでは今回のイベントのメインであるバンクェットについてレポートしていこう。
冒頭でも紹介したとおり,バンクェットは7vs.7のPvPコンテンツだ。通常のFEZの戦争もPvPではあるのだが,不確定要素が多く,また人数差があることが当たり前で,公平な戦いとは言えない場面が多い(いかにそういった状況を作り出すかが,FEZの戦争の面白さでもあるのだが)。バンクェットは,そこから純粋な対人要素だけを抜き出した競技性の高いPvPで,戦争とは違うセオリーが求められるのがポイントだ。
FEZには,「ウォリアー」「スカウト」「ソーサラー」「フェンサー」「セスタス」の5種類のクラスがいる。それぞれがバンクェットで担う役割も簡単に説明しておこう。
●ウォリアー
ウォリアーはスキルビルドにより,片手剣と盾を装備する「片手」タイプ,両手斧を装備する「両手」タイプ,大剣を装備する「大剣」タイプに分類される。片手と,両手または大剣は,取得スキルを調整することで両立できるのがポイントだ。片手は約3秒間相手の動きを止める「シールドバッシュ」が使用可能で,これで敵の動きを止めて両手斧か大剣に持ち替え,大ダメージを与える。ウォリアーは火力と足止めを両立させられる,バンクェットでキーとなるクラスなのだ。
●スカウト
デバフなどを与える「短剣」タイプと,弓を使う「弓」タイプ,銃を使う「銃」の3つのスキルビルドが可能なスカウト。短剣は一定時間スキル使用不可(通常攻撃も行えなくなる)にする「アームブレイク」や,視界を閉ざす暗闇効果を与える「ヴォイドダークネス」,防御力を下げる「ガードブレイク」など,数々の妨害系のデバフ効果を与えられる。
●ソーサラー
ソーサラーは取得するスキルによって「火」「氷」「雷」「盾」「重力」「メテオ」などと呼ばれる6タイプがあるが,バンクェットでは「アイスジャベリン」で敵を凍らせて動きを止めたり,「アイスボルト」で移動速度を低下させたり,また両方の効果を広範囲にもたらす「ブリザードカレス」を使用できる「氷」タイプが主に選ばれる。うまく立ち回れれば強力なサポートができるが,防御力が低いのが難点だ。
●フェンサー
フェンサーは機動力に優れた火力クラスで,とくに1vs.1で力を発揮する。戦闘力の高さに加えて,「ルーン」と呼ばれるスキルで味方にバフをかけられる。
●セスタス
セスタスは,戦争における対建築物のエキスパート。対人戦向きのスキルもいくつかあるが,ウォリアーやフェンサーには一歩及ぶといった感じだ。
今回のバンクェットでは,ウォリアーとスカウト,フェンサーを中心とした構成で,チームによって各クラスの人数が異なっていたり,それ以外のクラスを入れていたりしていた。どのチームも基本的には,動きの止まった相手を集中攻撃で各個撃破していく,というのが基本戦術だったようだ。
バンクェットの基本的なルールは,10分間の試合時間中に相手チームから10キル取れば勝利。制限時間となった場合は,キル数の多いチームが勝ち,キル数が同じ場合は,与ダメージランキングで上位5位に入ったプレイヤーが多いチームが勝利。決勝戦は上記を1セットとして,3セット中2セット先取したチームが勝利となる。また,当日に決勝戦のみ,セットごとにクラスチェンジが可能となることが発表され,よりスリリングな試合を見ることができた。それらを踏まえたうえで,各試合の模様をお伝えしよう。
●1回戦 第1試合 「あいうえおちーむ」vs.「Orphanage」
実はCブロックで「Orphanage」に敗れていた「あいうえおちーむ」。敗者復活ののち,初戦で激突することになった,いわば因縁の戦いでトーナメントの幕が開いた。
「Orphanage」の氷ソーサラーの動きがよく,序盤から「あいうえおちーむ」を凍らせていくが,そこからの追撃が満足に決まらず,キルを取りきれないでいた。そこをうまく切り抜けた「あいうえおちーむ」が,フェンサーを中心に「Orphanage」のスカウトへ反撃を仕掛ける。そのままキルを取りつつ攻め込んでいく「あいうえおちーむ」。反撃を受けて危うくなると,「あいうえおちーむ」の弓スカウトが放つ「ピアッシングシュート(※)」で状況をリセットし,ピンチを回避する戦いに会場から注目が集まった。
中盤からは互いにキルを取り合う展開になるが,ピアッシングシュートの援護を受け,攻めと受けにメリハリを付けて戦う「あいうえおちーむ」が有利に戦いを進め,先に10キルを取り決勝戦へ駒を進めた。
※射線上の敵をすべて吹き飛ばす弓スキル
●1回戦 第2試合 「まってください」vs.「Re:membar」
全チーム中,もっとも練習していたと話していた「Re:membar」。試合開始直後から,前に出て「まってください」にプレッシャーをかけていく「Re:membar」が,キッチリとキルを取る展開でスタートした。
そのままリスポーン地点の滝壺まで追い込みながら,相手を狩っていく。壁など逃げられない場所へ追い込んで,さらに数的有利な場面を作り出して相手チームに当たっていたのが印象的だ。制限時間を待たず10キルをマークし,圧倒的な攻撃力を見せつける形で「Re:membar」が勝利した。
●3位決定戦 「Orphanage」vs.「まってください」
開幕直後からマップ中央で激突する両チーム。氷ソーサラーを有する「Orphanage」が最初の攻防を制して押し込んでいくが,やがてカウンターを受けて下がってしまう。ここで「まってください」がキルを取るものの,そこから決定的な場面を作れずシーソーゲームとなっていく。お互いに押して引いてを繰り返していくが,「Orphanage」の短剣スカウトによるデバフにより,「まってください」の戦線が一気に崩れてしまう。そこを逃さずに攻勢に転じた「Orphanage」が押し切り,3位の座を手に入れた。
●決勝戦 「あいうえおちーむ」vs.「Re:membar」
日本一のバンクェットチームを決める決勝戦は,敗者復活戦から見事に勝ち上がってきた「あいうえおちーむ」と,優勝候補の呼び声高い「Re:membar」によって行われた。
「あいうえおちーむ」は,ウォリアー4,フェンサー2,スカウト1と攻撃よりの構成。対する「Re:membar」は,ウォリアー3,スカウト3,フェンサー1と攻撃と妨害を両立した形の構成だ。
1セットめは中央でぶつかる形で始まるかと思いきや,早々に「あいうえおちーむ」から放たれたピアッシングシュートで「Re:membar」陣営を分断し,バラバラになったところを攻め立てていく。キルを取られながらも体制を整え,カウンターに出る「Re:membar」。あと一歩でキルを取れる場面を何度も作りながらも,そのたびにピアッシングシュートで蹴散らされてしまい,逆にキルを取られる悪循環に嵌ってしまう。個々の技術では「Re:membar」の方がわずかに上か? という印象もあったが,それを作戦で見事に覆した「あいうえおちーむ」が1セットを先取した。
続いて行われた2セットめは,「Re:membar」はウォリアー3,スカウト3,ソーサラー1と構成を変えてきた。「あいうえおちーむ」は1セットめと変わらない構成だ。
序盤は中央で互いのフェンサーがルーンを撃ち合い,また各キャラクターが1度だけ建築できる「スカフォード」を建てながら,牽制が続いていく。障害物となるスカフォードを利用して「Re:membar」の氷ソーサラーが相手を凍結させていくが,やはりピアッシングシュートで切り抜けられてしまう。一進一退の中,壁際で行われた攻防で「Re:membar」を一気にキルしてリードを奪う「あいうえおちーむ」だったが,リスポーンした「Re:membar」のメンバーに逆に滝壺へと追い込まれてしまう。ここで「Re:membar」がキルを取り返して詰め寄るものの,相手キルを上回ることはできなかった。そのまま硬直状態が続き,制限時間切れになるかと思いきや,最後に乱戦に持ち込んだ「Re:membar」が大量キルを取るという大逆転劇で2セットめを勝利で飾り,勝敗は3セットめにもつれこんだ。
双方,2セットと同じ構成で始まったラストラウンド。
中央の激突で最初のキルを取ったのは「あいうえおちーむ」。ピアッシングシュートを攻撃に使い「Re:membar」を翻弄するが,完全に押し込むまでは持ち込めないでいた。そのまま慎重な戦いが続くが,小さな隙を見逃さず攻勢に出た「Re:membar」が立て続けに3キルをゲット。数的不利になった「あいうえおちーむ」は,後退しながら「Re:membar」をしのぎ,リスポーンした仲間とともに4キルを取り返す。そのまま乱戦へともつれんでキルを取り合った結果,9対9のイーブンになる。
先に1キルとれば優勝となる場面に,両チームは慎重に立ち周りで相手を牽制していく。どちらかといえば「あいうえおちーむ」が攻め,「Re:membar」が受けという形で時間が経過していくが,残り時間が5分を切ったところで「あいうえおちーむ」が前に出る決断を下す。
ピアッシングシュートで敵を分断しながら,孤立した相手を狩ろうとする「あいうえおちーむ」に,そんな状況を作らせず突出してきた相手を狩ろうとする「Re:membar」。双方入り乱れる乱戦は,ピアッシングシュートで分断され孤立した「Re:membar」のメンバーを逃さずに刈り取った「あいうえおちーむ」が紙一重で勝利し,見事バンクェット優勝の栄冠を手にした。
優勝「あいうえおちーむ」 |
準優勝「Re:membar」 |
第3位「Orphanage」 |
第4位「まってください」 |
通常,FEZの対人戦では,近距離戦に強いウォリアー,短剣スカウト,フェンサーの強さや役割が重視されていて,弓スカウトはあまり注目されていなかった。とくに「あいうえおちーむ」が多用していたピアッシングシュートは,戦争では撤退時に使われることが多く,逆に攻めるときに使われる「攻めピア」は,味方の攻撃を邪魔する悪手として上げられることもしばしばある。それをバンクェットに持ち込み,攻防どちらにも見事に使いこなし優勝へとチームを導いた戦術は,これからも注目の的となりそうだ。
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