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[SIGGRAPH]骨組みなしのぬいぐるみが動く!? 最新技術が披露される「Emerging Technologies」展示セクションレポート(1)
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印刷2012/08/09 00:00

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[SIGGRAPH]骨組みなしのぬいぐるみが動く!? 最新技術が披露される「Emerging Technologies」展示セクションレポート(1)

 北米時間の2012年8月5日に開幕した「SIGGRAPH 2012」。コンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術の国際会議と展示会であるSIGGRAPHには,一般企業ブースが集められた一般展示セクションの「Exhibition」のほかに,「Emerging Technologies」(通称「E-TECH」)と題された展示セクションが毎年設けられており,さまざまな出展者により次世代技術や最先端の研究成果がいち早く展示形式で披露されるのだ。

 そんなE-TECH展示セクションで筆者が気になった最新技術を数回に分けてレポートする。今回はその第1弾をお届けしよう。


「Stuffed Toys Alive! Cuddly Robots From a Fantasy World」

by 東京工業大学 長谷川晶一研究室


〜骨組みがないのに人のほうを向いて動く,柔らかいぬいぐるみ型ロボット〜

人のほうを向いて手足を動かすクマのぬいぐるみ
画像集#002のサムネイル/[SIGGRAPH]骨組みなしのぬいぐるみが動く!? 最新技術が披露される「Emerging Technologies」展示セクションレポート(1)
 東京工業大学の長谷川晶一研究室による「Stuffed Toys Alive! Cuddly Robots From a Fantasy World」では,内部に「ボーン」を仕込まず,自由な動きが行えるという「ぬいぐるみ」が展示され,来場者のアクションに対して反応を示すというデモが行われていた。

 これまでも,愛玩用のロボットとしてぬいぐるみの内部にボーン仕込み,それを動かすものはあったが,内部に複雑なメカを内蔵させたものは,妙に硬い芯のようなものが存在してしまうので,抱いたときに違和感を与えてしまう傾向がある(内蔵しているメカが重いという違和感もある)。
 そこで,長谷川晶一研究室では,それらのボーンを排除してぬいぐるみを動かすメカニズムを開発したというわけだ。

 長谷川晶一研究室が開発したぬいぐるみでは,筋肉に相当する糸が各可動部位に張り巡らされており,それらの糸を体幹部に集約させた小型モーターユニットで巻き取り,各部位を動かすという仕組みになっている。

左が制御マイコン,中央が糸の巻き取り機構と力センサーを一体化したモジュール。右が筋肉に相当する糸を通したぬいぐるみの手足のパーツ
画像集#003のサムネイル/[SIGGRAPH]骨組みなしのぬいぐるみが動く!? 最新技術が披露される「Emerging Technologies」展示セクションレポート(1)

ぎゅっと抱きしめても芯まで柔らかいのが大きな特徴だ
画像集#004のサムネイル/[SIGGRAPH]骨組みなしのぬいぐるみが動く!? 最新技術が披露される「Emerging Technologies」展示セクションレポート(1)
 このぬいぐるみでは,2つの方向からのアプローチでユーザーへインタラクションを実現しているとのこと。
 1つは,ユーザーが直接,ぬいぐるみを触ったり,抱きしめたり(力を掛けたり)といったことに対する反応である。そういったユーザーからのアクションは,ぬいぐるみの中に仕込まれたセンサー群で取得しているそうだ。

 ユーザーからのタッチに対するセンシングには,導電性の布を用いた静電容量式を採用(基本原理はスマートフォンなどのタッチパネルと同じ)。ユーザーがぬいぐるみを抱く,引っ張るなどの「力をかけてくる」ことに対するセンシングは,部位可動用に通した糸を利用して実現している。具体的には,部位可動用の糸が引っ張られると,隙間が変化するスイッチ構造が仕込まれていて,隙間の大小をフォトセンサーで検知。大きな隙間ができれば,大きな力が掛かっていることが検出できるというわけだ。
 こういったセンシングにより,強い力で抱かれるともがいたり,特定部位を触るとそこを動かしたりといったリアクションを実現しているとのこと。

写真の右上と左下のあたりにそれぞれKinectセンサーが設置されていて,状況を視覚し,外部のPCで知覚している。ぬいぐるみがどうリアクションするかは外部のPCで決めているとのこと。ちなみに,ぬいぐるみとPCは無線LANで接続されているそうだ
画像集#005のサムネイル/[SIGGRAPH]骨組みなしのぬいぐるみが動く!? 最新技術が披露される「Emerging Technologies」展示セクションレポート(1)
 もう1つは,ユーザーが「手を振る」といったぬいぐるみに直接触れないアクションへの反応や,ユーザーの位置をぬいぐるみが目で追い続けるようなリアクションだ。これらは,少々ユニークなシステムで実践されている。

 従来の発想ならば,ぬいぐるみの中にカメラを内蔵させるということになりそうだが,この研究では,「ぬいぐるみの目」に相当する2つのKinectセンサーを外部に配置しているのだ。
 1つめのKinectセンサーは,デモブースの直上に下向きで設置されており,ぬいぐるみと来場者の位置関係を把握している。2つめのKinectセンサーは,デモブースの水平上に横置きで設置。こちらはブース内にいる来場者のボーンを取得しているとのこと。2つのKinectセンサーを使って「ユーザーが手を振っている」「ユーザーが右にいる」などの状況を視覚し,外部のPCを使って知覚している。
 つまり,長谷川晶一研究室が開発したぬいぐるみでは,視覚と知覚(知性)をぬいぐるみの外部に出してしまっているのだ。
 もしかすると,今後は,インタラクティブなぬいぐるみ,あるいはロボットなどにおいて,こういったリモート環境的な発想が進んでいくのかもしれない。



TECHTILE toolkit: a prototyping tool for designing haptic media

by 慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科特任講師 南澤孝太氏ほか


〜回転や重さが感じられる振動システム〜

 現在のゲーム機では,ゲーム内で発生する衝撃を少しでも体感できるよう,ゲームパッドなどのコントローラに振動機構が内蔵されていることが多い。そういったコントローラに内蔵されている振動フィードバックは,小型モーターに取り付けられた錘を偏心回転させることで実現している。これは携帯電話などのバイブ機構と同様のものだ。

 慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科特任講師 南澤孝太氏らによる「TECHTILE toolkit: a prototyping tool for designing haptic media」では,そういった振動フィードバックをよりリアルにするイメージの研究が披露されていた。南澤氏は,音に例えるならば,これまでの振動フィードバックをBEEP音だとすると,今回の仕組みはHi-Fiサウンドのイメージだという。

市販のオーディオアンプ改造し,可聴範囲外の振動まで増幅できるようにした装置
画像集#006のサムネイル/[SIGGRAPH]骨組みなしのぬいぐるみが動く!? 最新技術が披露される「Emerging Technologies」展示セクションレポート(1)
 従来の振動フィードバックは単純な振幅をするものでしかなかったが,今回展示されていた「TECHTILE」システムは,高い解像度で振動を記録している振動フィードバックである。
 振動の記録には通常の音声マイクを用いるそうだが,よくよく考えれば,音も空気の振動なので,当たり前のことなのだ。ただし,記録したいのは振動のみなので,音波としての可聴範囲を考慮していない。つまり,可聴範囲外となる30Hz以下および20kHz以上の振動も記録している。
 なお,再生は,通常のスピーカーユニットと同じような一次元方向のリニアモーターで行うとのことだ。
 こうしてみると使用するデバイス自体は単純なものであり,信号の取り扱いを工夫しているだけで,実現コストは極めて安くできるだろう。

紙コップに石ころやビー玉を注ぐ実験はシンプルながらかなり驚かされた。実際には。振動が伝わっているだけなので,被験者が感じる重さは錯覚に過ぎない
画像集#007のサムネイル/[SIGGRAPH]骨組みなしのぬいぐるみが動く!? 最新技術が披露される「Emerging Technologies」展示セクションレポート(1)
 TECHTILEシステムのデモで最も驚かされたのは,2つの紙コップを糸電話のようにつないだシンプルな構成の実験である。片方の紙コップに石ころやビー玉を入れ,「ジャラジャラ」と振動させると,もう一方の紙コップにその振動がリアルタイムに伝わるというもの。
 実際には何も入っていない紙コップを握っているのに,石ころやビー玉が入っているほうの紙コップからの連続的な振動を感じて,あたかも自分が持っている紙コップに石ころやビー玉が注ぎ込まれたかのような錯覚で重みを感じてしまうのだ。

 種を明かすと,この実験は非常にシンプルな構成となっている。実際に石ころやビー玉を注ぎ込む紙コップ(入力側)の直下に振動記録素子が実装されており,ここで取得した振動がアンプを通って増幅され,被験者の持つ紙コップ(出力側)へと出力される。出力側の紙コップには,振動再生用のリニアモーターが横向きに実装されているだけだ。
 面白いのは,入力側の紙コップを回転させて,紙コップ内で石ころやビー玉を回してやると,出力側の紙コップでも中で石ころやビー玉が回転しているかのような振動が得られるところである。

展示ブースでは,ほかにもTECHTILEシステムのデモが行われていた。写真左は,音が出るプラレールを改造し,振動を出せるようにしたもの。列車を手で持って走らせると,列車が線路を走るときに発生する「ガタンゴトン」感が手に伝わってくるのだ。右の写真は,バドミントンのシャトルを打つ衝撃が味わえるシステムで,バドミントンの動画を観ながら,映像内の選手に合わせてラケットを振ると,シャトルのインパクトが手に伝わってくる
画像集#008のサムネイル/[SIGGRAPH]骨組みなしのぬいぐるみが動く!? 最新技術が披露される「Emerging Technologies」展示セクションレポート(1) 画像集#009のサムネイル/[SIGGRAPH]骨組みなしのぬいぐるみが動く!? 最新技術が披露される「Emerging Technologies」展示セクションレポート(1)

 すぐにでもゲームコントローラに採用できそうなTECHTILEシステムだが,こうしたHaptics(触覚学)がらみの特許は,米国のImmersionが広く押さえているため,難しいかもしれないというのが実情だ。Immersionといえば,PlayStation 3やXbox 360といったゲームパッドの振動フィードバック機能に対して,ソニーやMicrosoftを相手取り,巨額の訴訟を起こしたことで有名な企業である。

 ならば,ゲームコントローラには,偏心モーター以外のリニアモーター式振動フィードバックシステムが応用されたことはないのかというと,実はそうでもない。例えば,ニンテンドーDS/DS Lite用の「DS振動カートリッジ」がその1つだ。DS振動カートリッジは,TECHTILEとほぼ同様のシステムが採用されているが,任天堂は同社独自の特許技術を使っているためImmersionから訴えられていない。

 とはいえ,Hapticsの分野は商業展開に危険が伴うため,TECHTILEの研究グループでは,商業的な方向へは持っていかず,振動ベースのHapticsをモジュール化し,オープンな方向へ注力していきたいとのことだった。
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