レビュー
SandForceコントローラ採用のSSD 500シリーズ第2弾をチェックする
Intel Solid-State Drive 520
メーカーの選択肢が実質的に4社程度となっているHDDとは異なり,SSDはさまざまなメーカーから販売されているが,そのなかでも人気ブランドの1つとなっているIntelから,2.5インチHDD互換モデルの新製品「Solid-State Drive 520」(以下,SSD 520)が発表された。
今回4Gamerでは,そんなSSD 520の容量240GBモデルを入手したので,その性能検証を通じて,市場における立ち位置を確認してみたい。
SandForceブランドのコントローラを搭載
「データ圧縮機能」で書き込み性能を強化
Solid-State Drive 510」(以下,SSD 510)の上位に位置づけられるものだ。
SSD 510は米Marvell Technology Group製のコントローラ「88SS9174-BKK2」を搭載しているのに対し(関連記事),SSD 520では米LSI(旧SandForce)製の「SF-2281VB1-SDC」へ切り替わっているのが,大きな特徴となる。
SF-2281VB1-SDCは「SandForce SF-2200」ファミリーに属するSSDコントローラチップで,2012年1月時点で採用例が広がっているものの1つだ。
SF-2281VB1-SDCを採用するSSD 520の場合,シーケンシャルリード(Sequential Read,逐次読み出し)の転送速度はSerial ATA 6Gbps接続時に最大550MB/s。シーケンシャルライト(Sequential Write,逐次書き込み)も同520MB/s。SSD 510だと順に最大500MB/s,最大315MB/sなので,とくに書き込み関連のスペックが向上していることになる。
また,ランダムアクセス関連のスペックが高いのも,SSD 520の特徴である。ゲームにおいて,起動時に生じるマップなどのロードではシーケンシャルアクセスが主体になる一方,プレイ中に細かなデータの読み書きが繰り返されるときはランダムアクセスが主体となるため,ランダムアクセス性能が高いほど,ゲーム中の体感性能は向上する。ゲーマーにとって,ランダムアクセス性能は見逃せない要素となるだけに,SSD 520には期待が持てそうだ。
ちなみにランダムアクセス性能の目安としては,1秒間に実行できる入出力数を示すIOPS(Input/Output Per Second)がよく使われるが,SSD 520だと,4KBブロックのランダムリード(Random Read,無作為読み出し)で最大50000IOPS,同ランダムライト(Random Write,無作為書き込み)で最大60000IOPSに達するという。
SSD 520,容量240GBモデルの基板両面。容量16GBのMLC NANDフラッシュチップを16枚搭載し,単純計算すると合計256GBになるので,16GB分はECCや管理領域,代替セクタなどに使われているのだろう。なお,SSD 510では外付けで1Gbitのキャッシュ用DRAMチップが搭載されていたが(関連記事),SSD 520にはそれがない。SandForce SF-2200ファミリーは内蔵バッファを持っているから不要,ということなのかもしれない | |
順番は前後するが,金属製カバーを外したところ。コントローラのところには熱伝導用のシートが貼られていた。なお,言うまでもないことだが,製品版での金属製カバー取り外しは保証外の行為であり,“殻割り”した時点で保証を受けられなくなるので,この点はご注意を |
入手した資料によると,SSD 520ではデータを圧縮してフラッシュメモリへ格納する仕様の採用により,データ書き込みの所要時間が短縮され,シーケンシャルおよびランダムライトの性能が従来のSSDと比べて圧倒的に高速化されたとのことだ。
「圧縮機能」と聞くと,容量の拡大効果も期待できそうだが,実際のところ,そういった用途では用いられておらず,その代わり,フラッシュメモリを利用するブロックの最適化により,SSDの長寿命化に役立てているという。記録されるデータサイズが全般的に小さくなるため,使用頻度が均一になるようデータを並び替える処理が行いやすくなるということのようである。
なお,この圧縮機能はコントローラとファームウェアによって行われるため,ユーザー側で効率的な圧縮法などを意識したりする必要はないとも,資料は謳っている。
ところで「圧縮が効かないデータはどうなるの?」と思った読者もいるに違いない。Intelの資料では,「標準的なユーザーのストレージに占めるデータの種類の割合」を示しつつ,「多くのデータで圧縮が効く」と主張しているが,ビデオや,(圧縮済みの)ゲームにおけるマップデータなどでは,ドライブ内のハードウェア圧縮が効きづらいことも考えられる。
そういうケースでは読み書きの性能が落ちるのではと想像できるが,それについてIntelの資料は,シーケンシャルリードは変わらない一方,シーケンシャルライトは最大235MB/sに低下すると説明している。また,ランダムライトは最大16500IOPS,ランダムリードは最大46000IOPSに下がるようだ。圧縮できないデータを前にしてもそこそこ“堪える”印象だが,いずれにせよ,データの種類に応じ,性能が揺らぐ可能性は踏まえておいたほうがよさそうである。
なお,そのほかの特徴としては,256bit AES(Advanced Encryption Standard)暗号をサポートすることも挙げられるが,これは主に企業での利用を意識した機能だろう。
SSD 520(左)とSSD 510(中央),X25-M Mainstream SATA Solid-State Drive(右)を並べてみたところ |
ビスを外すとスペーサーは取り外せるが,この状態では上蓋も簡単に取り外せてしまう |
付属品一覧。写真左のビスは,3.5インチドライブベイに取り付けるマウンタ用である |
スペーサーを外せば7mm厚のストレージデバイスとしても利用可能だが,ビスはあくまでもスペーサーの存在を前提とした長さになるため,7mm厚のSSDとして使おうと思った場合は,ユーザー自身で(しかも自己責任で)ビスを手配する必要がある。
接続インタフェースは前述のとおりSerial ATA 6Gbpsで,NCQ(Native Command Queueing)に対応。冒頭でも述べたとおり,今回入手した個体の容量は240GBだが,そのほかに60〜480GBまで計5モデルが用意されている。各製品の主な仕様は表1のとおりで,シーケンシャルリードのスペックには違いがない一方,そのほかには細かく違いが設けられていることと,容量240GBモデルは,シリーズ中,最も公称スペックの高い製品であることが分かるだろう。
総じてSSD 510を上回る性能を確認
Windows起動時間もSSD 510より短く
では,SSD 520の性能検証に移ろう。今回,比較対象としては,SSD 510の容量250GBを用意した。そのほかテスト環境は表2のとおりで,今回,SSDは「Intel Z68 Express」搭載を搭載したASUSTeK Computer製マザーボード「Maximus IV Extreme-Z」の,チップセット側Serial ATA 6Gbpsポートと接続する。
一方,スペック上のIOPS値から性能の高さが期待されるランダムアクセスは,ブロックサイズ512KBでSSD 510が優勢であるものの,4KBブロックではリード・ライトともSSD 520が大きく上回ってみせた。
もっとも,ここでのテスト結果で最も目を引くのは,NCQ(Native Command Queueing)の性能を測る4K QD32だろう。リード・ライトとも,SSD 520がSSD 510の2倍以上と,圧倒的なスコアを示している。NCQ性能の高さはIOPSの大きさにも関連してくるので,このテストではSF-2200の実力を見せつける結果になっていると述べていい。
SSD 520における1000MBブロック設定時のCrystalDiskMark実行結果 |
SSD 510における1000MBブロック設定時のCrystalDiskMark実行結果 |
続いてはテストサイズを「4000MB」に変更したときの結果だが,傾向は1000MB設定時とあまり変わらないようだ。全般にスコアは低下気味でSSD 520と同510の差は縮まっているものの,「4K QD32でSSD 520がSSD 510を圧倒する」という傾向に変化はない。
SSD 520における4000MBブロック設定時のCrystalDiskMark実行結果 |
SSD 510における4000MBブロック設定時のCrystalDiskMark実行結果 |
実際のWindowsアプリケーションを用いたときの体感性能を測るとされるPC総合ベントマークソフト「PCMark 7」から,総合スコアと,ストレージ関連のスコア「Storage Score」を抜き出したものがグラフ1だ。総合スコアではSSD 520のほうがSSD 510よりもスコアは2%高く,Storage Scoreではそれが5%に開いている。
さらにグラフ2は,PCMark 7のストレージ関連テストから,「Gaming」のスコアを抜き出したものである。
GamingテストにはMMORPG「World of Warcraft」が採用されており,「キャラクターの作成後,いったんゲームを終了させ,再起動させたとき」のディスクアクセスパターンを再現して性能を測るというものになっている。
テストは「Gaming 1」「Gaming 2」「Gaming 3」の3つで,その違いは残念ながらホワイトペーパーでも説明されていないのだが,PCMark 7の開発元であるFuturemarkは「ランダムアクセスが主体」と説明しているので,ランダムアクセス性能に優れるストレージデバイスのほうが高いスコアを示すはずだ。
果たして,SSD 520のスコアはSSD 510比で4〜5%高い。Storage Scoreを踏襲した結果になっっているわけだ。ゲームの場合,多くはランダムアクセスになるはずなので,SSD 520とSSD 510では前者のほうがやや有利ということになる。
最後にWindowsの起動時間を見ておきたいと思うが,実のところ,起動時間を厳密に測定するのは難しい。起動ログを頼りにする場合,再起動時間を計るのは容易なのだが,BIOS(やUEFI)のPOST(Power On Self Test)の時間も含まれてしまうからだ。
そこで今回は,Microsoftがリリースしている「Windows 7 Software Development Kit」に含まれる,ブート時の性能ログを取るツール「xbootmgr」を使ってみることにした。Windowsの起動プロセスが始まって以降のログを記録して,それを,同じくWindows 7 Software Development Kitに含まれる「Windows Performance Analizer」から見てみようというわけである。
xbootmgrはWindows起動プロセスの開始直後から性能データ――CPU負荷率やディスクI/Oなど詳細なデータ――を記録し続け,ログオン時に記録終了のダイアログのボタンをクリックすると記録が止まるという仕組みである。Windows起動時からのログであるため,POSTの所要時間は含まれない。
で,その結果だが,ここではSSD 510から見てみよう。下のスクリーンショットは,xbootmgrを実行し,Windows Performance Analizerからそのログを見たものである。xbootmgrではほかのデータも取得しているが,今回はディスクI/O数(上ペイン)とディスク使用率(下ペイン)に絞って表示させている。
上ペインにおいて,縦軸は時間あたりのディスクI/O数で,赤色がリード,青色がライトだ。横軸は秒単位の経過時間となっており,横軸0のところがWindowsの起動プロセス開始時点になるが,約3.5秒経過時点からディスクアクセスが始まり,8秒後にディスクアクセスがいったん収まっているのが分かるだろう。ここでWindowsのログイン画面が表示されている。8秒以降は,筆者がログインパスワードを入力し,ログイン処理後,xboomgrの記録終了を指示するまでの時間,すなわち,筆者の作業速度に依存する時間が記録されている。
一方,下ペインは縦軸がディスク使用率,横軸が時間となり,上ペインと同じく8秒後にディスクアクセスがいったん収束している。
以上を踏まえて,SSD 520のログとなる下のスクリーンショットを見てほしい。SSD 520では起動後約7.5秒でディスクアクセスが収まっており,ログオン画面が出るまでの時間が,SSD 510より0.5秒程度縮まった。
面白いのは,ディスクI/OのパターンがSSD 510から大きく変わっていること。コントローラが異なるので当たり前といえばそれまでだが,これは時間あたりに発行できるI/O数が異なるためだと推測できる。
やや気になるのは,SSD 520での起動中,ディスク使用率が100%に貼り付く時間がある点だが,この結果だけを見て「ディスクアクセスがビジーになるからどうこう」と話すのは危険だ。今回は「SSD 520だとこうした結果になる」というところで留めたい。
ランダムアクセス性能の向上は
ゲーマーにとって恩恵か
IntelからPCメーカーへ出荷されるときの1000個ロット時単価は,60GBモデルが149ドル,120GBモデルが229ドル,180GBモデルが369ドル,240GBモデルが509ドル,480GBモデルが999ドル。店頭に並ぶときはこれよりも高くなる傾向にあることを踏まえるに,少なくとも安価では決してないが,ストレージ性能,とりわけランダムアクセス性能へ期待するゲーマーの選択肢にはなるはずだ。
Intelによる発表(英語)
インテルのSSD製品情報ページ
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