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「FFXI」はいつまで遊べるのか。気になる“ヴァナ・ディールのいま”を松井聡彦プロデューサーと藤戸洋司ディレクターにインタビュー
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印刷2016/08/09 00:00

インタビュー

「FFXI」はいつまで遊べるのか。気になる“ヴァナ・ディールのいま”を松井聡彦プロデューサーと藤戸洋司ディレクターにインタビュー

 スクウェア・エニックスのMMORPG「ファイナルファンタジーXI」(以下,FFXI)は,サービス開始から14年めの,大きな節目を迎えている。

 最終章シナリオと銘打たれた「ヴァナ・ディールの星唄」が,2015年11月に完結。そして,PS2 / Xbox 360版のサービスが2016年3月に終了(現在はPC版のみでサービス継続中)。今後は,NEXONが開発する「スマートフォン向けファイナルファンタジーXI(仮)」も控える中,“本家”がこれからどうなっていくのか,気になる人は多いはずだ。

ファイナルファンタジーXI

 そこで今回,現在のFFXIの舵取りをする松井聡彦プロデューサー藤戸洋司ディレクターに,近年のFFXIの動きを振り返ってもらい,MMORPGにおける長期運営の難しさや,今後の抱負などをたっぷり聞いてきた。FFXIの現役プレイヤーだけでなく,長らくヴァナ・ディールから離れているプレイヤーも,ぜひ目を通してほしい。

ディレクター 藤戸洋司氏(左),プロデューサー 松井聡彦氏


「大型バージョンアップ」の終了とその真意


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。お二人に登場していただくのは久しぶりなので,自己紹介も兼ねて,これまでFFXIにどのように関わってきたのか,あらためて教えてください。

松井氏:
 プロデューサーを務めている松井です。
 FFXIとはPS2版の立ち上げ当初からの付き合いで,バトルプランナーからスタートし,さまざまな業務に携わってきました。一時期,「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」PC / PS4 / PS3)の開発に参加しましたが,2012年(当時の)FFXIプロデューサーを務めていた田中さん(※田中弘道氏)に呼び戻され,現在まで続いています。

藤戸氏:
 ディレクターの藤戸です。
 現在はバージョンアップの開発作業や,運営業務全般の管理などを担当しています。FFXIのサービス開始当初からチャットシステムやUI周りをはじめ,季節イベントやクエスト,アイテムのドロップなどを担当していました。代表的なところでは,チョコボ育成や釣りなどといった生活系コンテンツも手がけました。

4Gamer:
 FFXIでは2015年11月に「ヴァナ・ディールの星唄」のストーリーが完結し,2016年3月にPS2 / Xbox 360版のサービスが終了しました。大きな節目を迎えているいまの,正直な心境をお聞きしたいのですが。

松井氏:
 星唄を作っているときは,最後のストーリーということもあり,開発チームが全員一丸となっていました。とても忙しかったのですが,いろいろなことを振り返りながら,充実した日々を送っていましたね。PS2 / Xbox 360版のサービス終了に関しては,それによりプレイヤーさんが激減してしまわないか心配しましたが,いざ迎えてみると杞憂でした。いまは,これからもより良いサービスを皆さんに届けねばならないという思いが強く,気を引き締め直しています。

4Gamer:
 星唄はFFXIにおける最終章のシナリオで,かつ最後の大型バージョンアップという触れ込みでした(関連記事)。つまり,FFXIではもう大型バージョンアップが行われないのでしょうか?

松井氏:
 その点については,順を追って説明をさせてください。自分がプロデューサーに就いた頃に遡りますが,FFXIにおける今後の方針として,開発/運営チームを縮小していくことが決まっていました。

4Gamer:
 当時というと,新生FFXIVの開発に入っていた頃ですね。

松井氏:
 もちろん,サービスを終了するわけではありませんが,エリアやジョブの追加などといったいわゆる“大型バージョンアップ”は,チームの規模的に難しくなりました。

藤戸氏:
 新たなストーリーを導入する場合は,物語を考えるだけでなく,新しいNPCやエリアも必要になりますし,全部を合わせると相当なコストに膨れ上がってしまいます。個人的には,FFXIで実現したいアイデアも,まだたくさんあるのですが……。

松井氏:
 そういった方針を開発チームに伝えたところ,「悔いが残らないように,今のうちにできる限りのことをやっておきたい!」という声が多く挙がってきたんです。
 とくにストーリーに関しては,これまでヴァナ・ディールには膨大な量が積み重ねられており,それらに相応しいフィナーレが必要だと思ったんです。そういった経緯で生まれたのが「ヴァナ・ディールの星唄」でした。

4Gamer:
 なるほど。星唄が終了してからも,毎月1回のペースで定期的にバージョンアップが実施されていますね。

藤戸氏:
 はい。たとえ大規模なバージョンアップでなくても,ゲームバランスの調整や,既存のデータを利用して別のコンテンツを開発するなど,プレイヤーの皆さんに楽しんでいただくための方法はあります。コンパクトな開発規模で効果を出す方向にシフトしているものの,バージョンアップ自体はこれからも継続して行っていきますよ。

4Gamer:
 分かりました。ハードウェアのスペック面で,PS2 / Xbox 360版は,PC版よりも大きな制約がありました。そちらのサポートが終了になったということは,ある意味“足枷”が外れたという見方もできそうです。PC版に合わせたハイスペックな追加コンテンツを期待する声もあると思いますが,そのあたりはいかがでしょうか。

松井氏:
 それが,実は難しいんです。実際に開発の手順を話しますと,例えばイベントシーンなどのグラフィックス回りの作業では,最初にPS2向けの開発ツールで作成したのちに,ほかのプラットフォーム用へのコンバート作業を行います。これはFFXIの開発の仕様で,PS2 / Xbox 360版のサービスが終了した今も同じなんですよ。

4Gamer:
 え,そうなんですか。ということは,スペック面の制約は変わらず残っているわけですか。

藤戸氏:
 そうなりますね。ただ,従来の開発ツールを使わない,例えばサウンドなどの部分は制約がだいぶなくなっています。とくにメモリ問題の心配をしなくてよくなったのは大助かりですね。

4Gamer:
 なんというか,もったいない気がします。PC版専用に開発ツールなどの環境を構築し直すことは難しいのでしょうか。

松井氏:
 実現は厳しいですね。というのも,FFXIを開発した頃のスクウェアは,自分達で極限までカスタマイズした開発ツールを使うことが多かったんです。シンプルで使いやすい開発ツールで,当時は多くの実績も出していたのですが,いかんせん十数年が経過しており,さまざまな面で時代に対応しきれなくなってきています。

4Gamer:
 単純に14年前,開発開始時期を考えればさらにその前に構築したシステムですから……。

松井氏:
 仮にいまからPC版専用のツール環境を構築するとなると,開発ツールをゼロから作り上げるのと,さほど違わないくらいの作業量になるんです。

4Gamer:
 それってもう,新作を1本作るようなものですね。

藤戸氏:
 あと,ライセンス回りの問題もありますね。PS2をベースに作る時点で,いろいろなフォーマットや,それを使うためのライセンス契約があったので,それは今でも続いています。

4Gamer:
 なるほど……今あるものでPC専用を,というのは,なかなか難しいわけですね。

松井氏:
 もしPC版用の開発ツール環境があれば,おっしゃる通り,FFXIでも一つ上のステップを狙えるでしょう。そもそも大規模バージョンアップを“終了”と発表しなくても良かったかもしれません。

4Gamer:
 リッチなグラフィックスのFFXIも見てみたかったので,そこは残念な気もしますね。ちなみに,少しお答えづらいかもしれませんが,現在の収益はどのような状況なのでしょうか。

松井氏:
 現在はチームをコンパクトにしていますし,数字はお答えできませんが,損益率は優秀で会社の利益にも十分貢献していますよ(笑)。

4Gamer:
 そうなんですね。ビジネス面で気になっていたのですが,FFXIを基本プレイ無料制にするという考えはなかったのでしょうか。

松井氏:
 実はFree to Play(F2P)が盛り上がった頃に,FFXIでも検討したことはありました。ですが,仮にあとから導入したとすると,いまある内容の利便性を下げて,それを向上させるためのアイテムを売るといったビジネスモデルに転化しなければなりませんから。

4Gamer:
 むしろ月額課金制のままが良い,というプレイヤーも当然いるでしょうね。

松井氏:
 その後,F2Pのソーシャルゲームが盛り上がりましたが,実際には月額課金制のほうが,はるかに(プレイヤーの)コストは安くなっていますし,その判断は間違いではなかったと思います。ですから,1180円(税込1274円)+1キャラ100円(税込108円),それに見合うサービスを続けていこう,と。


いつでもヴァナ・ディールに里帰りしてもらえるように。短時間のソロプレイでも楽しめるMMORPGへと変化


4Gamer:
 先ほども少し話をうかがいましたが,あらためて,これからの開発・運営の方針について教えてください。何より,「いつまで遊べるのか」……は既存プレイヤーにとってものすごく大きな関心事だと思いますし。

松井氏:
 そうですね。まず大前提となるのは,FFXIのサービスをこれからも末永く続けていくことです。「ファイナルファンタジー」のナンバリングを冠している以上,“XI”を歯抜けにはできません。そのような事があってはならない,という強い思いがあります。

4Gamer:
 それは心強いお言葉です。

松井氏:
 ですが,ただサーバーを開けているだけでは,意味がありません。仮にプレイヤーの皆さんが戻りたいと思ったときに,現実的に楽しめる環境でなくてはならないのです。

藤戸氏:
 これまで導入された膨大なコンテンツの中には,当時のプレイ環境に合わせて作られたものも多いんです。それらの多くは環境が大きく変化した今,人を集めることができず,プレイを敬遠されてしまうケースも珍しくありません。

4Gamer:
 延々と続くMMORPGである以上,キャラクターの成長や環境の変化で,人気がなくなるコンテンツはどうしても出てきてしまいますね。

藤戸氏:
 そういった旧システムやコンテンツを,現在のプレイ環境に合わせるための調整を,数年間コツコツと行っています。

4Gamer:
 そうした調整のアップデートは,ずっと続いていましたよね。ですから,確かに近年のFFXIの環境は激変した,と実際に感じています。ただ,休眠プレイヤーの中には,そのことを知らない人もいると思います。主なところをあらためて簡単に教えていただけませんか。

松井氏:
 分かりました。以前のFFXIにおける大きなハードルを調査したところ,「パーティ編成」と「エリア移動」の2つに集約されていることが分かりました。これらのハードルを軽減すべく,「フェイス」「エミネンス・レコード」「ホームポイントワープ」の3システムを導入しています。

藤戸氏:
 順番に説明していくと,「フェイス」は,有名なNPCの分身が,仲間として一緒に戦ってくれるというシステムです。以前プレイされていた方なら,「フェローシップ」の人数を増やしたバージョンとイメージしていただくと,分かりやすいかもしれません。
 冒険を進めていくと呼び出せるフェイスの種類は次々と増えていきます。同時に呼び出せる人数も最終的にはフルパーティ規模となるので,1パーティ向けのコンテンツに一人で挑戦することも十分可能です。

4Gamer:
 ヴァナ・ディールの各地を回って,ミッションなどを振り返りながら,フェイスとして加わるNPCを集めていくだけでも楽しそうですよね。

ファイナルファンタジーXI

藤戸氏:
 続いての「エミネンス・レコード」は,小〜中規模のクエストをこなしてポイントを集め,それと引き替えに報酬を得られるシステムです。レベルを上げつつ,冒険に必要十分な装備品も手に入れられます。

松井氏:
 エミネンス・レコードは,レベル帯にかかわらず,ちょうど良いプレイ目標となっているので,復帰したてで,何をしたらいいのか分からない人に向けてもオススメですね。ソロプレイでも,1週間足らずでレベルキャップに到達できますよ。

4Gamer:
 え,ソロで1週間ですか?

松井氏:
 はい。それに実際に社内でも検証して,星唄を含めて,すべてのミッションをソロプレイで制覇できることも確認しています。

4Gamer:
 ときおり,FFXIをシングルプレイ専用で遊びたいみたいな話もありますが……それ,ほぼ実現してませんか?(笑)。

松井氏:
 そう言えるかもしれませんね(笑)。ですから,FFXIのストーリーを体験したい人に,いまこそ遊んでほしいんですよ。

藤戸氏:
 最後の「ホームポイントワープ」は,一度到達したエリアの要所(ホームポイント)へ,瞬時に移動できる機能です。ウィンダスには昔から似た機能がありますが,ホームポイントワープはバトルフィールドの目の前など,各エリアにおける要所をカバーしているので移動に便利です。

4Gamer:
 長らく休止されている人にとっては,「FFXI=パーティプレイを前提としたガチガチのMMORPG」という認識が根強くあるかもしれませんし,この3システムだけでも“リニューアル”と呼ぶに十分な変化ですよね。

松井氏:
 はい。FFXIの開発当初は,ハードルの高さに見合った報酬をという当時のトレンドを受け継いで,高いハードルこそがコアなプレイヤーさんに求められていると考えていました。ですが,運営を14年も続けるうちに,プレイヤーさんのプレイスタイルもかなり変わってきましたので,開発のポリシーもそれに合わせる必要があったのです。

4Gamer:
 それは確かに。プレイ時間だったり,難度に対する意識だったり,10年前と比べると……。自分がロートルだからかもしれませんが,例えばマイキャラが三国の出身地からジュノへ初めて冒険したときの達成感を味わえたときは,ハードルなんて吹っ飛んだものですけど(笑)。

藤戸氏:
 「ハードルがあるからこそMMORPGは楽しい!」という気持ちは,私もよく分かるんですけど,難しいところですね。
 
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