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印刷2012/03/09 19:46

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[GDC 2012]日本のゲーム業界はまず負けを認めるべき――稲船敬二氏が語る「日本のゲームの未来」

 歯に衣着せぬ発言とその行動力で,業界の内外から注目を集めるcomceptの稲船敬二氏は,GDC 2012で「The Future of Japanese Gaming」と題した講演を行った。

 稲船氏は,言うまでもなく日本屈指のゲーム開発者であり,国内だけでなく,海外にもその名を轟かせるクリエイターの一人。実際,今回の講演の前後ではファンからサインを求められるなど,稲船氏は海外のゲームファンやクリエイターから高いリスペクトを受ける数少ない日本人でもある。


 カプコンから独立して以降,すでに3つの会社を立ち上げ,ほかにも数々の著書の執筆や講演を行うなど,カプコン時代以上に精力的な活動を行っている稲船氏。そんな氏による今回の講演は,日本のゲーム業界を叱咤激励する内容になっていた。

 その語り口は相変わらず過激で,耳の痛い,はっきりいってぐうの音も出ないほどの正論が展開されていったわけだが,「良薬は口に苦し」という言葉があるように,苦境に立たされている日本のゲーム業界が再び立ち上がるためのヒントは,稲船氏から発せられるような率直な意見の中にこそあるはずなのだ。


稲船の言葉を認めざるを得ない状況になっている,今


 まず稲船氏は,「会場にいる日本の方には,耳の痛い話をせざるを得ないと思っています。あるいは,今日この講演を聴きに来ている人達には,日本のゲームが大好きな方も多いと思いますが,その人にも嫌な思いをさせるかもしれません」と前置きをしたうえで,「以前,私は“日本のゲームは死んだ”と発言し,日本のクリエイターや経営者から総スカンを食らいました」と切り出す。

[GDC 2012]日本のゲーム業界はまず負けを認めるべき――稲船敬二氏が語る「日本のゲームの未来」

 「日本のゲームはまだ死んでない。いい加減なことを言うな」などと,当時はほうぼうから突っ込みを受けたという稲船氏だが,「しかし今,稲船の言葉を直接的に批判する人は減ったと思います」と語る。そして「今は,稲船の言葉を認めざるを得ない状況になっているのだと思います」と続ける。

 北米を中心に世界のゲーム市場が右肩上がりに拡大していく中で,日本のゲーム会社の多くがその波に乗りきれなかったのは事実だろうし,氏が語るように,日本のゲーム産業の凋落を力強く否定する材料が,今やあまり見当たらないのも確かだ。
 しかし,稲船氏がかつて在籍していたカプコンは,日本では「海外展開を成功させている企業の代表格」のようなメーカーで,上記の“日本のゲームは死んだ”という発言は,そんなカプコンが大変調子の良い時期に発せられたものでもあった。それはなぜか?

 稲船氏は当時を振り返り,「あれは,グローバルでものを見ていたからこそできた発言だったと思っています」という。世界を相手に勝つということを考えれば考えるほど,「日本のゲーム業界に足りないもの」が見えてきたというのだ。


日本に足りないのはただ“勝つ”という意識。

勝つために必要なのは,まずは「負けを認める」こと


 では,今の日本のゲーム業界に足りないものとは一体何か。
 稲船氏は,「それは簡単です。今の日本には“勝つ”という意識が足りないと思います」と指摘する。続けて「日本のゲーム業界は,“勝つ”ということに慣れすぎて,実は敗者に変わっているということに気付けていないのだと僕は思っています」と述べて,日本のゲーム業界が自分達を「敗者だと認めずにいることが,日本の悲劇ではないでしょうか。世界への視野を広げることを拒んだ結果として,井の中の蛙になってしまったのが日本のゲーム業界だと思います」と,自身の見解を示した。

[GDC 2012]日本のゲーム業界はまず負けを認めるべき――稲船敬二氏が語る「日本のゲームの未来」 [GDC 2012]日本のゲーム業界はまず負けを認めるべき――稲船敬二氏が語る「日本のゲームの未来」

 そして稲船氏は,以下のように続ける。

[GDC 2012]日本のゲーム業界はまず負けを認めるべき――稲船敬二氏が語る「日本のゲームの未来」
 「勝つためにやらなければならないこと。それはまずちゃんと負けを認めるということです。そしてそのうえで,“勝つ”という強い意志を持たなければなりません」
 「海外に来て思うことは,日本のゲームが“過去の思い出になりつつある”ということです。ビートルズの音楽は最高だった,スティーブ・マックイーンはいい役者だった,1963年型のコルベットは素晴らしい――。でも,これらは全部,思い出です」
 「思い出でできるビジネスは範囲が限られています。もうビートルズが4人で揃って新曲を出すことはありませんし,スティーブ・マックイーンも新しい映画には出られません」
 「彼らが素晴らしいのは確かです。でも,過去の思い出に過ぎません。日本のゲーム業界は,こういったものと変わらなくなっているのではないでしょうか」

 講演の中で稲船氏は,「過去の栄光におぼれるべきではない」と指摘する。移植版やHD版を出せば,短期的な利益は上げられるかもしれないが,ゲームファンが本来求めているのは,あくまでも「新しい作品」だというのだ。
 実際,稲船氏自身も,よく「Mega Man(ロックマン)大好き!」といったファンに声をかけられるそうだが,「大変嬉しいし,誇りに思っている。しかし,これはあくまで過去へのリスペクトだ」と割り切って考えているという。


失敗したからこそ実感できる成功の価値。

勝ち馬に乗っているだけではそれが分からない


[GDC 2012]日本のゲーム業界はまず負けを認めるべき――稲船敬二氏が語る「日本のゲームの未来」
 その後に語られた,稲船氏がプロデューサーに“なりたて”の頃に経験したという話も,大変興味深い。
 「Mega Man Legends」(ロックマンDASH)の制作に関わっていた稲船氏は,作品自体は高い完成度を誇っていたにも関わらず,本作を上手に売ることができずに,とても苦労をしたのだという。稲船氏は当時を振り返りながら「私自身,とても気に入ってる作品です。しかし,プロデューサーとしては道が険しかった」と語る。

 「当時,Mega Manシリーズ自体があまり売れなくなっていました。だから,“Mega Manの新しい作品を出す”と発表しても,メディアもゲームファンもあまり期待してくれませんでした。当然,取材の依頼もほとんどありません。だからプロデューサーの僕は,頑張って地道に作品を売っていこうとしました」
 「でも,世の中は甘くはありません。販売実績的には悲惨なものでした。いまでこそMega Man Legendsは,ファンの間で語り継がれる作品になっていますが,当時はそうではありませんでした。稲船のゲーム人生の中で,Mega Man Legendsは最大の失敗であり,同時に最大の宝です」

 そして,そんな苦い思いをした稲船氏が次に担当した作品が,世界中で大ヒットとなる「Resident Evil 2」(バイオハザード2)である。稲船氏は,Mega Man Legendsの時とのあまりの期待度や扱いの違いに,とても驚いたという。

 「ご存じのように,これは前作の大ヒットを受けて作られた作品で,三上真司(現:Tango Gameworks代表取締役)がディレクションを担当した作品です。彼にディレクションに集中してもらうため,私がプロデュースを担当して,より多く売るために頑張りました」
 「先ほどお話したとおり,Mega Man Legendsではなかなか取材の依頼が来なかったものですが,Resident Evil 2の時は,何も言ってないのに,どんどん取材やインタビューのオファーが来ました」
 「さらに前作が大ヒットしていたこともあって,会社側の期待値が高く,プロモーションのコストも段違いでした」

[GDC 2012]日本のゲーム業界はまず負けを認めるべき――稲船敬二氏が語る「日本のゲームの未来」
 稲船氏は,「もし,最初にプロデューサーとして担当した作品がResident Evil 2だったら,プロデューサーの仕事は簡単なものだと勘違いしたと思います」,そして「日本語では,こういうのを“勝ち馬に乗る”と言います。楽ですが,これだと本質は見えません」と語る。

 そもそも初代Resident Evilは,一度は開発中止の宣告をされるなど,会社からも期待されていないタイトルだった。三上氏の苦労や,自身が体験したMega Man Legendsの苦労があったからこそ,Resident Evil 2の経験が,稲船氏の中で貴重な価値になっているのだという。

 「Resident Evil 2は,三上真司の会心の一撃だったと思います。その三上の会心の一撃にただ乗っかっただけであれば,今の稲船はきっといません。Mega Man Legendsがあって,そのうえでResident Evil 2があるから,いまの自分がいるのです」


日本のゲーム業界に必要なのは,ブランドの「発展」あるいは「再構築」。それを怠ったのが今の日本


 そうした自身の体験談を語ったあと,稲船氏は「今の日本のゲーム業界の中で中心になりつつある人は,単に勝ち馬に乗っているだけかもしれません。そういう視点を持ってみてください」と言い,再び日本のゲーム業界への警鐘を鳴らす。

 「僕がResident Evil 2のプロデュースで学んだのは,ブランドを確立させる重要さと,ブランドに頼りすぎないということです」
 「人はブランドに惹かれるものです。大ヒットゲームの続編にはブランドがありますし,そんな作品にユーザーは注目して期待します。売るための努力が必要ないとは言いませんが,それは最小限で済みます」
 「だけど,過去のブランドに頼って努力を怠ったら,うまくいかなくなるのは当たり前です。そして,そうした繰り返しの結果として,現在の日本のゲームがあるんだと思います」

 稲船氏はさらにたたみかける。
 
 「日本のゲーム業界をリードする人達が今考えなければならないのは,ブランドの維持ではありません。発展させ,再構築することだと思います」
 「Appleが過去の栄光に縛られ,PCとかOSばかりに目がいっていたら,きっと今の姿はなかったでしょう。ブランドの維持ではなくて,発展という選択肢をジョブズが選んだ結果,今のAppleがあるんだと思います」
 「日本のゲーム業界も,ブランドの発展,あるいは再構築,これが求められているということに早く気付いてほしいと思っています」

余談だが,スライドに登場しているブタは,comceptのマスコットキャラなのだとか
[GDC 2012]日本のゲーム業界はまず負けを認めるべき――稲船敬二氏が語る「日本のゲームの未来」 [GDC 2012]日本のゲーム業界はまず負けを認めるべき――稲船敬二氏が語る「日本のゲームの未来」

 どんな業界でも言えることだが,黎明期からその業界を支えてきた人と,盛り上がっている時期に参加してきた人では,そもそも考え方が大きく異なる。これはゲーム業界も同様で,古いクリエイターほど,まだ業界とも呼べなかった頃の話をよく引き合いに出し,警鐘を鳴らすことが少なくない。


常に苦難の道を選ぶ。

そして「俺は勝つ。絶対に勝つ。苦労なんか気にしない」と思うだけでいい


 シンプルなスライドと共に,とうとうと自身の見解を述べていく稲船氏。講演の終盤,氏は自身の人生観や仕事に対する姿勢を語りながら,改めて日本のゲーム業界が再び立ち上がるためには何が必要かという点に迫っていく。

 「苦しいときに困難を選べるかが,僕はポイントだと思います。調子が良いときに苦しいことをやるのは簡単です。お金がいっぱいあるから,少しぐらい危険な冒険をしても,損をしても大丈夫。……そんな考え方で成功できるとは思えません」
 「人間,覚悟がないと駄目です。楽な道と苦難の道,そんな分かれ道に人はいつも立たされています。そして,大半の人はそこで楽な道を選んでしまうものです。当たり前の話です」
 「しかし成功する人は,そんな場面で楽な道を選んでいません。なぜなら,苦難の先にしか成功がないということを知っているからです。それが勝つということです」
 「今の日本に足りないのは,勝つという意識です。成功への執念です。そうしたものが無いのは,成功のままバトンを渡された人が歩んでいる悲劇なのかも知れません」
 「シンプルに考えてください。勝ちたいのか。成功したいのか。今のままでいいのか。世界とのレベル差は。悔しいと思わないのか。俺は勝つ。絶対に勝つ。苦労なんか気にしない。勝つためにはなんでもやってやる。そんな風に思うだけで,僕はいいと思います」
 「ゲーマーは,ゲームの中の主人公に何を求めているのでしょう。例えば,Resident Evilの中で,レオンやクリスが楽な道を選んでいますか? いいえ,彼らは常に苦難に立ち向かいます。映画でも同じですよね。苦難に立ち向かい,打ち勝ち,勝利を収めるから,そのゲームや映画は面白いのです」
 「1年前,私自身も“苦難”(独立)を選びました。大手のゲーム会社であるカプコンを辞めて,自分自身の新しい道を歩み始めました。たぶんカプコンに残っていたほうが,一時的には楽ができたと思います。でも,僕には“このくらいでいい”という割り切りがどうしてもできませんでした」

[GDC 2012]日本のゲーム業界はまず負けを認めるべき――稲船敬二氏が語る「日本のゲームの未来」
[GDC 2012]日本のゲーム業界はまず負けを認めるべき――稲船敬二氏が語る「日本のゲームの未来」 [GDC 2012]日本のゲーム業界はまず負けを認めるべき――稲船敬二氏が語る「日本のゲームの未来」

 会場に来ている開発者,そして日本のゲーム業界で働くすべての開発者に「苦難を選べ」という稲船氏。頭では分かっていても,なかなか行動に移せないことへの指摘で,耳が痛い。
 そして稲船氏は以下のような発言で講演を締めくくった。

 「日本に必要なのは“勝つ”という意識です。そして,日本に足りないものはヒーローです」
 「勝ち続けるという意識を持ってほしい。そうすれば,日本(のクリエイター)は,みんなに好かれるヒーローでいられると思います。新たなヒーローを生み出せると思います」
 「もちろん,その新しいヒーローを私自身が産み出してみたいと思いますし,あるいはそのヒーローに私自身がなって,世界中のみんなと一緒に闘っていきたいと思っています」
 「日本人は,自分達に足りないものを自覚して,世界に立ち向かって行ってほしい。今日はこういう形でお話しさせてもらいましたが,叱咤激励したいと思います」
 「皆さんにどれだけ響いたか分かりませんが,言いたいことを言わせてもらったので,僕自身はスッキリとした気持ちで帰れます(笑)。良い話ができたのではないかと思っています。あと,久しぶりに皆さんに絵を見せることできて,とても嬉しかった。ありがとうございました」


[GDC 2012]日本のゲーム業界はまず負けを認めるべき――稲船敬二氏が語る「日本のゲームの未来」

 さて,いつものとおり(あるいは少し控えめ?)の“稲船節”といった感じで,内容だけ見ると,特筆する点はあまり無かった感のある今回の講演。しかし最後の質疑応答では,「なぜそこまで悲観的なのか。日本ゲーム業界の凋落を示す具体的なデータはあるのか」など,むしろ日本のゲーム業界を擁護するようなニュアンスのコメントがいくつか寄せられていたのが,個人的には妙に印象に残った。

 これは今回に限らない話なのだが,常に大上段でゲーム業界を語る稲船氏の発言は,一見すると具体性の無い「精神論」に聞こえるかもしれない。しかし,社会に出て仕事をしていくうえで,何かの問題に直面したとき,他人から「これをすればよい」と言われて解決するようなケースがほとんど無いことは,今さら指摘するまでもないし,ある程度の社会経験を積んだ大人であれば常識だろう。

 つまり,結局のところ何か困難を克服しようと思ったら,自分でその原因を探り,考え,そして何かしらアクションを起こさなければならない。それには,強い意志や決意と,そこから生まれる実行力が必要となる。
 稲船氏が伝えたいのは,上記のように“自立的に考える人間”になるために必要なものとは何か,あるいは「実際に行動に移す」ために必要なものとは何かという点なのだ。だからこそ,小手先の技術論や制作論ではなく,仕事に対する「意識」や「姿勢」といった部分を,繰り返し繰り返し語っているのではないだろうか。

 誰かに教えてもらえる「改善方法」など,そう簡単に転がっているものではないし,もしあったとしても,それは結局のところ大したものではない。
 日本ゲーム業界を復権させるためには,つまるところ,強い意志で新しいことにチャレンジし,試行錯誤するしかない――稲船氏の言わんとするところは,きっとそういうことなのだろう。

GDC 2012公式サイト

comceptコーポレートサイト

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