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印刷2011/09/08 13:48

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[CEDEC 2011]海外で活躍するデザイナーが指摘する日本と海外の仕事に対するアプローチの違い。基調講演「『ムーンショット』デザイン幸福論」レポート

[CEDEC 2011]海外で活躍するデザイナーが指摘する日本と海外の仕事に対するアプローチの違い。基調講演「『ムーンショット』デザイン幸福論」レポート
 CEDEC 2011の2日目,基調講演「『ムーンショット』デザイン幸福論」と題する講演が行われた。講演を行った奥山清行氏は,欧米自動車メーカーのデザイナー/ディレクターを歴任した人物だ。その奥山氏が各国で仕事をする中で気付いた日本と海外の違い,日本のモノ作りの特性と今後の課題,クリエイターはどうあるべきかなどを説いた。

※9/21 KEN OKUYAMA DESIGN事務所,CEDEC事務局の要請により,写真および固有名詞の削除と記事の簡略化を行いました


一流ブランド……。共通するのは“WANTS”の存在


 冒頭,日本人の特質などについて「団体力が弱い」などと解説した奥山氏は,ブランドに話を進めた。商品には,利益率の高い「ブランド商品」と,生活必需品でが薄利多売となる「コモディティ商品」が存在するのだが,奥山氏は日本ではそれが逆転して悲劇を生んでいると述べる。

 まず,奥山氏は自身が手がけたスポーツカーにまつわるエピソードを紹介した。その車は,調査では400人が「確実に買う」と答えたのだが,その会社の創業者の言葉に従い,需要より1台少ない数だけ生産することにしたというのだ。ところが開発を始めると,購入希望者は3000人以上になった。そこで誰が実際に購入できるか,メーカー側で選別したのである。高飛車とも取れる対応だが,逆にそれがブランドを守り,ファンを増やしてきたと説明する。

 その一方で日本では,市場調査の結果から,6000万円にすれば500台売れる,5000万円で売れば1000台売れると,自らブランド力を下げてしまう傾向があり,利益が小売店に流れてしまっているという。
 あるブランドは,さまざまな商品を展開しているが,他社製品と比較すると,すべてのカテゴリで最上位に位置する製品ばかりとなっている。それは,その会社がすべての商品に最高のノウハウを投入することで,ライフスタイル全体を提供しているからだと説明する。ブランドとは,メーカーにそうした意義を持つものであり,だからこそ安売りすべきではないというわけだ。

 一方で,コモディティは数で勝負しかないかというと,安くても「プレミアムブランド」と位置付けられる商品があるという。先に“トータルエクスペリエンス”を提供する仕組みを作っておけば,多くの人はプレミアムを払ってでも,その恩恵を受けたがると説明。「ブランドはライフスタイルを,コモディティはトータルエクスペリエンスを演出することで,利益をもたらす」とまとめた。

 奥山氏の話は,「NEEDS(ニーズ)」と「WANTS(ウォンツ)」に移っていく。WANTSはもともと和製英語とのことだが,今や欧米では“特別な価値を求める”という意味として,NEEDSよりも重要視されているということだ
 例えば,国内で開発された正確なクォーツ時計よりも,欧州で作られた年代物の機械式時計のほうが高額で取引されるという例がある。これは,前者は電池の仕様が変わったり,半導体が寿命を迎えると使い物にならなくなるのに対して,後者はメンテナンスさえすれば,所有者が亡くなったあとも残る。つまり,その人が生きた証となりうる。
 奥山氏は,人間は生きた証を残すためにモノを作ると述べ,そこには,日本古来の“すべてのものに神は宿る”という宗教観を感じると続ける。「だからこそ,人は高値でもほしがる。これがブランドであり,WANTS。「NEEDSとは違う」とまとめた。


リサーチを主軸に置いた狩猟型開発(分散投資)ではなく,農耕型開発(集中投資)の時代に


工業デザイナー 奥山清行氏
[CEDEC 2011]海外で活躍するデザイナーが指摘する日本と海外の仕事に対するアプローチの違い。基調講演「『ムーンショット』デザイン幸福論」レポート
 続けて奥山氏は,1億円という予算と100人の人材がある場合の,海外と日本のリソースの使い方に言及する。北米などでは50人ずつの二つのチームに分け,それぞれに5000万円ずつ予算を与える。それによって,たいしたことのないアイデアでも最終的に面白いものができると説明する。
 ところが日本では,100人に100万円ずつ与える。が,どんなに優れたアイデアでも,今時100万円では何もできない。最初にビジョンを決め,そこに集中投資することが必要で,分散投資をしていては立ち行かなくなると奥山氏は指摘する。

 奥山氏は,多くの人に自分達に何ができて何が必要か分かっていないのではないかと述べた。氏は,1960〜70年代の南欧某国に憧れて,その国で仕事をするようになったのだが,当時のその国の人達は,自国の悪い部分ばかり見て,その国にロマンを抱いていなかった。その結果,氏のほうが,その国の人よりも本質的な部分でその国らしいデザインが可能ったと述べる。同様に,長く同じゲームに携わっているから詳しいということはなく,そういう人ほど本質を理解できていないことを指摘した。


「人生を決めた15分」では,プロ意識が逆転勝利を招いた


 奥山氏は,自身がある車のデザインを手がけることになった「人生を決めた15分」のエピソードを披露する。自動車メーカートップがデザインを確認し,一瞥して「これはダメだ」と帰ろうとした。そこで,上司が手を差し伸べる。15分間,会長を引き止めておくから,未完成のデザイン画を持ってくるように指示したのだ。奥山氏が急いで持っていったところ,今度はゴーサインを出したのだ。氏は当時を振り返り,いつ来るか分からない瞬間のために準備をしておくのがプロ,それをできないのがアマチュアだと述べた。
 また,プロは手がけるものに詳しい半面,インスピレーションではアマチュアに劣る。しかしアマチュアは一つのアイデアに満足して,そこから先に進まないが,プロは繰り返し作業し,どうでもいいものも含めて100個のアイデアを出す。
 それが100人集まれば1万個のアイデアがあるわけで,その中から1個を選べば必然的に優れたものになる。それをシステム化するのがプロであり,プロはシステムで仕事をすると続け,頭で考える前に手を動かすことの重要性を説いた。


「ムーンショット」の意味は“夢に向かって努力すれば実現する”


 奥山氏が監修する新型新幹線は,時速320km走行でトンネルを出入りしても騒音を極めて低く抑えられ,理論上,時速500kmの安全走行も可能だが,オペレーションの確実性を優先して時速320km走行に抑えているという。
 しかし海外への売り込みでは,それらには言及せず,時速320kmの走行ばかりを強調する。オペレーションは製造会社ではなく鉄道会社の管轄だからだ。単純な速度なら,もっと速いものはあるわけで,海外では相対的に新幹線の価値が低く見られがちになる。奥山氏は,「求められているのは,車両そのものだけでなく,日本が築き上げたシステム全体」と述べ,どんな価値を求められているか分かっていないと指摘する。

 最後に奥山氏は,講演のタイトル「ムーンショット」の由来を話した。“月を撃つ”という意味のこの言葉は,もともと実現不可能な話を指していたという。しかし,1969年,月面着陸が成功し,それを取り上げた海外のテレビ番組がタイトルにムーンショットと名付けて以来,「夢を持って事に望めば実現する」という意味に変わったそうだ。
 奥山氏がカーデザイナーを目指すきっかけとなったスポーツカーは偶然にも,月着陸船を運んだロケットに影響を受けてデザインされたもの。その車に感銘を受けた少年が,やがて南欧に渡り,その会社のデザイナーを務めたわけである。奥山氏は,あらためて「夢に向かって努力するれば実現する」と講演を締めくくった。
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