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印刷2011/06/29 00:00

インタビュー

ジブリは決して続編を作らない有名ゲームスタジオのようなもの――スタジオジブリに入社したドワンゴの川上量生氏が見た,国内最高峰のコンテンツ制作の現場とは

このまま何十年も同じ生活が続けばいい


4Gamer:
 しかし,何か思春期の中学生みたいな疑問で申し訳ないのですけど,そこまでして作品を作りたいと思うモチベーションの源って何になるんでしょうか。何か伝えたいことや訴えたいことがある……とかなんでしょうか。

川上氏:
 それは,純粋に「作っているのが楽しいから」じゃないですかね。鈴木さんが言ってましたけど,彼は「このまま何十年も同じ生活が続けばいい」と言うんですよ。ずっと映画を作り続けられていれば幸せだと。そういう感じで日々の仕事に打ち込んでいますよね。そして,それは羨ましいことですよね。

4Gamer:
 そうですね。

川上氏:
 TAITAIさんは,「プランB」という言葉を知っていますか?

4Gamer:
 プランB?

川上氏:
 これは鈴木さんがアメリカ人のビジネスマンから聞いた話らしいんですが,彼らは必ず自分の「プランB」というのを持っているらしいんですよ。プランBっていうのは,要するにリタイアしたあとの生活のことです。

4Gamer:
 ああ,なるほど。

川上氏:
 鬼のように働くアメリカのビジネスマン達は,「いつかはこの生活をやめて,プランBの生活を送りたい」と思っているわけですよ。自分の牧場を持って牛を追う生活がしたいだとか,田舎に土地を買って釣りをして過ごすんだとか。

4Gamer:
 気持ちは分かります。

川上氏:
 でも鈴木さんには,そういうのがまったくなくて彼らに驚かれたらしいんです。仕事と自分の理想の生き方というのが,完全一致しているんですね。

4Gamer:
 うーん。「日本人の人生観/仕事観」ってそういうもの……でもないか。でも,僕には日本人でプランBを持っている人って少数派に思えるんですけど。国単位でいうと,今の中国人とかはプランBを持っているイメージがありますけどね。

川上氏:
 日本人でも,例えば夏野(※)さんとかはプランBを持っていると思いますよ。多分だけど。夏野さんみたいな生き方の人は持ってるんじゃないですかね。

※夏野 剛(なつのたけし):ドワンゴ取締役。元NTTドコモの執行役員で,iモードを立ち上げたメンバーの一人として知られる。

4Gamer:
 ちなみに川上さんはプランBを持っているんですか?

川上氏:
 いえ。僕はもう「生きたいように生きるだけ」です(笑)。

4Gamer:
 まぁゲーム業界もそうですが,「好きなことを仕事にしたい」と思う人は,仕事そのものに人生の価値を見出す傾向はあるのかな,とは思うんですよね。仕事が自分の人生とマッチしていれば,そんなに幸せなことってないわけで。

川上氏:
 本来はそうですよね。

4Gamer:
 アニメ監督つながりでお話しすると,押井 守さんが自著の「勝つために戦え!」という本の中で,“アニメ監督としての自分の勝利条件”みたいな話をされているんですよ。その中でいろんな映画監督を引き合いに出して,スピルバーグは勝利者なのかとか,庵野監督はどうだ,ひいては自分にとっての勝利条件とはなんだ,みたいなことを書いていて。

川上氏:
 まぁクリエイターというのは,作品を作ることこそが目的ですよね。

4Gamer:
 ええ。要するに押井さんが自分の勝利条件として定義付けていたのは,「自分の作りたい作品が次も作れる」ことこそが,“勝利”だと言うんですよ。商業的に失敗して周りから批判を浴びたとしても,次も自由に作れる限りは勝利者なんだと。逆に大成功を収めた結果,次の作品がその成功に縛られるようであれば,それは作り手としては敗北なのではないかと。

川上氏:
 それはそうかもしれませんね。そういう意味であれば,ジブリはやはり勝利し続けている集団なんでしょう。

4Gamer:
 でも,なんで勝ち続けられるんでしょうか。さっきも話に出ましたが,毎回「博打」をしているにも関わらず。

川上氏:
 そこは鈴木さんの反射神経じゃないですか? 必勝法っていうか,ワンパターンにできる手法は真似られますから。その時代,その時のベストな方法を選ぶというのが,鈴木さんのやり方なんだと思います。そもそも,時代を越えて通用する必勝法なんてないんじゃないですか。

4Gamer:
 結局のところ,その人の思考力/対応力だったり,物事を真摯に捉えてやるしかないってことでしょうか。

川上氏:
 鈴木さんは,今の現代……もしくはちょっと前の時代もそうですが,ナウシカとかラピュタみたいな作品を作って,何百億円もの収益をあげるのは無理だと言うんですよね。それは,もうジブリでも無理なんだと。なぜかと聞くと,「時代が求めてないからだ」と言うんです。

4Gamer:
 じゃあ,その「時代が求めてる求めてない」というのは,どこで判断というか,嗅ぎ分けるものなんだろう。

川上氏:
 そこは「感覚」としか言えないんだと思います。僕も不思議に思って,鈴木さんに「じゃあ,時代に合わせて作品を作っているんですか?」って聞いたら,鈴木さんの答えは「どんな作品であれ,時代は反映する。何を作ったとしても,それはその時代の雰囲気を反映せざるをえない」というものでした。

4Gamer:
 うーむ。

川上氏:
 鈴木さんが言うには,「だから作品はなんだっていい。どんな作品でも,その作品なりに時代を反映させるやり方があるんだ」と。じゃあ結局なんなんだよって話になるんですけど,少なくとも彼らは,その時に作りたい作品を,その時代に合わせて作っているだけなんだと思います。



鈴木敏夫氏と宮崎吾朗氏の人物像


4Gamer:
 しかし,話を聞くほどに興味が惹かれるのですが,スタジオジブリを率いる鈴木さんってどういう方なんでしょう。鈴木さんの視点や考え方で,川上さんが「やっぱり全然違うな」と感じたことなどはありますか?

川上氏:
 鈴木さんの話はめちゃめちゃ面白いですよ。それに鈴木さんの何が凄いかっていうと,問題の並行処理能力がとにかく凄いんですよね。
 僕なんかは,一つ頭を悩ましている問題があったら,そればっかりに気がいってしまって,ほかの仕事が手に付かなくなっちゃうんですけど,鈴木さんは,同時に4つも5つも超重要な案件/問題を抱えているんですよ。そして,すぐに頭を切り替えて処理できるんです。

4Gamer:
 うーん,見習いたい……。

川上氏:
 あとは人を説得する力。「人を説得して動いてもらう力」というのが凄まじいですね。

4Gamer:
 それはつまり,人をやる気にさせる力,という意味ですか?

川上氏:
 例えば,アニメ制作の工程で「ライカリール」(※)っていうのがあるんですけど,関係者みんなを集めて,それを何回も見るんですね。ちょっと変えては何回も見て,みんなの意見を聞くんです。

※イラストボードなど仮の映像素材を全カット並べて撮影し,動かない状態で1本のフイルムを作ってみるという作業

4Gamer:
 ほうほう。

川上氏:
 それで「この映画のテーマはなんですか?」みたいな話をするんですけど,別にそれは解答があって教えるようなものでもなくて,鈴木さんも一緒にみんなと考えているんですよ。
 もちろん,映画のテーマというのは最初に決まっているんですけど,それで本当に正しいのか,実際に出来上がった映画がどういう映画になっているのか。それを何度も何度も反芻しながら考えているわけです。そしてその過程で「この映画は何なのか」というのを“改めて発見していく”んです。

4Gamer:
 鈴木さんの,そのやり方というのは,要するに「スタッフ全員に当事者意識を持たせる」みたいなことなんですかね。当事者意識をもってもらったうえで,各自でアイデアなり視点なりを見つけていくということでしょうか。

川上氏:
 それも一つのポイントでしょうね。あれだけの作品,プロジェクトというのを実際に動かしているメンバーって本当に少ないですから。
 実際,僕がいるプロデューサー室というのも,数人しかいないんですよ。鈴木さんとその数人のスタッフで,ほとんどすべてのことを回している。もちろん,アニメを作る仕事は全然別のところでやっているんですけど,プロモーション一つをとってみても,ドワンゴだったらこの人数じゃどう考えてもできないな,みたいな量を捌いてますね。

4Gamer:
 スタジオジブリって,ゲーム業界でいうと,任天堂やBlizzard Entertainmentと同じくらいに“神秘的な会社”というんでしょうか。やり方や考え方の一つ一つがとても興味深いんですよね。

川上氏:
 あとは,いろんな会社やパートナーの人たちと,うまく協力してやってるのも凄いですよね。「チーム鈴木」みたいなものを,会社の垣根とか関係なし作っちゃっている。鈴木さんという人の“人間力”の成せる技なんでしょう。

4Gamer:
 ふーむ。

川上氏:
 あと,外から見ていた時は全然そう思わなかったけど,ジブリに入ってみて発見したことがあります。

4Gamer:
 それは?

川上氏:
 宮崎吾朗さんは天才だ,ということです。彼は天才だと思うんですよ。そうじゃないと思っている人が多いと思うんですけど,間違いなく天才。

4Gamer:
 それは,仕事で接してみてそう思ったということですか。

川上氏:
 だって,例えば「ゲド戦記」って,彼が生まれて初めて,いきなり映画撮らされて出来た作品ですよね。それって凄いことだとは思いません? その前は,彼は環境デザイナーとして公園や庭を作っていたんですよ。アニメーターとしての下積みをしていた,とかではなくて。

4Gamer:
 確かに……。

川上氏:
 突然「監督をやれ」って言われて,それで映画ができること自体がまずおかしいわけですよ。だから,僕は吾朗さんが「なんでそんなことができたんですか」って鈴木さんに聞いたんですよ。

4Gamer:
 なんという答えだったんですか?

川上氏:
 鈴木さんが言うには,父親が家に帰ってこないから,父親との唯一のコミュニケーションが,父親のアニメを見ることだった。だから,父親が作ったアニメのほとんどのシーンのレイアウトを暗記していたっていうんですよね。

4Gamer:
 え。

川上氏:
 だからゲド戦記っていうのは,過去のジブリ作品,宮崎アニメのオマージュみたいなシーンがたくさんありましたよね。あれは,吾朗さんの中にあるジブリアニメの構図をたぐって,そのつぎはぎで作品を作ったからだと言うんです。でもそれって,普通の人間にできる所業じゃないと思うんですよ。

4Gamer:
 宮崎吾朗さんは,メディアの露出もそこまで多くはないので,僕は純粋に分からないんですけど,端から見ていて思うのは,「勝ち目のない戦い」をしている方だな,ということなんですよね。

川上氏:
 そう。吾朗さんは,とても苦労している方なんですよ。全然,楽な道を歩んでない。酷い作品を作ったら「やっぱり息子は駄目だ」と言われ,良い作品を作っても「父親のおかげだ」とか言われる。彼はそういう道を選択したわけじゃないですか。

4Gamer:
 勝ちの目が見えないですよね。普通は「やれ」って言われたら逃げちゃうと思います。

川上氏:
 正解がないルートを選んでしまっているんですよ。吾朗さんは。勝ちのカードがないゲームをやってる人なんです。でも,彼は周りに何を言われようとも,へこたれていない。前を向いて頑張っていますよね。
 もちろん,宮崎 駿さんほどの実績は残していないので,これからなのだとは思いますが,やっぱり宮崎 駿の天才性というのを受け継いでいる人だな,と思います。それに……。

4Gamer:
 それに?

川上氏:
 いや,宮崎 駿さんも相当気難しい方なんでしょうけど,吾朗さんも大概ですよ。やっぱり親子だな,あの二人は,っていうところが,僕の一番の発見です(笑)。


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